2004年02月09日(月) |
酔っぱらいブギ(下) |
幸い、日が照っていて、それほど寒くはなかったので、「風邪を引くことはないだろう」と思い、いくら起こしても起きないおいちゃんを、しばらくそこに放っておくことにした。
それからしばらくしてから、またおいちゃんの叫ぶ声が、店内から聞こえた。 そこに行ってみると、おいちゃんは店長とやり合っていた。 「出て行ってくれ!」 「何で、出らないけんとか。おれはお客さんぞ」 「人に迷惑かけるような人は、お客さんじゃない!」 そう言って、店長はおいちゃんを引っ張り出そうとした。 しかし、おいちゃんは抵抗する。
おいちゃん、歳はとっていても、毎日芋掘りで鍛えているから、力だけはある。 到底一人の力では、おいちゃんをつまみ出せそうにないので、周りにいたぼくたち従業員が、おいちゃんの手や足を取り、そのまま持ち上げて外に運び出した。 誰かが「放り投げれ」と言った。 それを聞いたおいちゃんは、「投げるな!」と言った。 また誰かが、「このへんにしようか」と言うと、おいちゃんは「いいか、そおっと置け、そおっと」とぼくたちに指示をした。。 酔っぱらってはいるものの、わりと冷静である。 おいちゃんを、そのまま外に置いて、ぼくたちは店の中に入った。
店内に入ると、清掃のおばちゃんたちがブツブツ言っていた。 「どうしたと?」と聴くと、「あのおいちゃん、おしっこをまりかぶっとるんよ(注;おしっこを漏らした、という九州弁。おしっこをしかぶった、とも言う)」と言う。 またである。 昨年も、おいちゃんはこの時期に、店の入口の中で立ち小便をしたり、寝小便をして、ぼくたち従業員を泣かせているのだ。 おいちゃんが来るということは、おいちゃんとの格闘以外にも、おしっことの闘いも覚悟しておかなければならない。
ところでおいちゃんだが、その後むっくりと起き出し、また店内に入ってきた。 何度追い出されても意に介せず、舞い戻ってくるのだ。 まさにゴキブリのようなしぶとさである。
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