2004年02月08日(日) |
酔っぱらいブギ(上) |
「何か、こらぁ!」 今年もまた、この声が帰ってきた。 酔っぱらいおいちゃんである。 店の改装後、しばらく姿を見せなかったが、寒くなってまた舞い戻ってきた。 あいかわらず、どこで拾ったかわからない自転車に乗ってやって来、隣のスーパーで酒を買い、適当に出来上がったところで大声を上げ騒ぎ出す。
昨日、酔った勢いで、繋いであった犬にちょっかいをかけ、手を噛みつかれたらしい。 その犬の飼い主にさんざん文句を言って、慰謝料1000円を巻き上げたという。 また、銀行のキャッシュディスペンサーで、お金をおろしている女の人に、「こらぁ、いくら出すんか!?」などと凄んでいたという。 結局、店の人間とすったもんだの末、警察に通報されご用となった。
今日も昼からやってきて、大声を上げていた。 ぼくが遠巻きに見ていると、おいちゃんはぼくの姿を見つけ、「おう、大将。昨日も来たんだけど、あんたいつ来ても休みですなあ。わたしゃ、あんたに用があってですなあ…」と言う。 聞けば、携帯テレビの調子が悪いということだった。 おいちゃんは、ぼくが電気売場の人間だということを知っているので、ぼくに逆らうとテレビやラジオの修理などで便宜を図ってもらえないと思ってか、ぼくの前では大人しくしている。 だが、声は大きい。
このままだと、また人に迷惑がかかると思ったぼくは、「おいちゃん、おれ、トイレに行く途中っちゃね。歩きながら話そうや」と言って、外のトイレに向かって歩き出した。 すると、おいちゃんもぼくに付いてくる。 まんまと外に連れだして、「おいちゃんの話はわかったけど、現物を持って来な、どういう状態かわからんやん。今からとっておいで」と、ぼくは言った。 「いや、今日は持って来れんですけ、別の日に持ってきます」 「じゃあ、おれ、トイレに入るけね。おいちゃんも、外は寒いんやけ、早く家に帰り」 そう言って、ぼくはトイレに行く振りをし、別の入口から店内に入った。
しばらくして、外を見てみると、何とおいちゃんは玄関の前で寝ているではないか。 何人かの人が、おいちゃんを見ている。 ぼくは、おいちゃんの寝ているところに行き、「おいちゃん、起きんね。風邪引くよ」とおいちゃんを揺さぶった。 ところがおいちゃんは、起きる気配がまったくない。 それを見ていたお客さんが、ぼくに「酔っぱらってるんですか?」と聴いた。 「ええ、いつもこうなんですよ。深酔いするとあたり構わず寝て、中途半端に酔いが冷めると騒ぎ出す。困ったもんですよ」 それを聴いて、お客さんは笑い出したが、起こすのを手伝ってはくれなかった。
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