最近、にがりと椿油で頭をマッサージしている。 この二つが、髪の健康のために一番いいと、人から聞いたからである。 使ってみると、なるほど秋口から毛細りしていた髪が、心なしか太くなったような気がする。 やはり、にがりと椿油の情報は間違ってなかったようだ。
ところで、それらのおかげで髪は健康になりつつあるのだが、ここで困ったことが起きてしまった。 それは、髪が若干黒くなったような気がする、ということだ。 ぼくは、もう黒髪のことには未練がなくなっているのだ。 というより、黒髪のことよりも、今は白髪のほうが大事なのだ。 その理由は二つある。
一つは、『しろげしんた』というハンドルネームのことがある。 もし黒くなったりしたら、『しろげしんた』という名前は嘘になってしまうのだ。 「体は名を現わす」でつけた名前だから、なおさらである。 ぼくはこの名前が気に入っている。 一生この名前を使っていきたいと思っているのだ。
もう一つの理由だが、一年ほど前から、床屋に行くたびに「きれいな白髪ですね」と言われている。 ぼくはそのことに、喜びを感じているのだ。 髪が伸びていく段階で、一人で白髪に見入っていることもある。 「このまま、髪が伸びたら格好いいのう」などと一人で悦に入っているのだ。 もし、サラリーマンやめたら、白髪を伸ばしてやろうとも思っている。
もし髪が黒くなったら、「体は名を現わす」だから、名前は当然『くろげしんた』とか『くりげしんた』とかになってしまう。 こんな名前を使うくらいだったら、嫌いな本名を使ったほうがましである。
それに、今更黒くなっても、若い頃のように真っ黒になるとは思えない。 中途半端に黒い頭というのは、実に情けない。 えらく老け込んで見えるのだ。 20代後半に、すでに中途半端に髪が白くなっていたぼくは、若い女の子などから、「白髪じじい」などと悪口を叩かれていたものである。 あの時は、かなり落ち込んだものだ。 そんな思いをしたくないと思って、カラーリンスを使うようになったのだ。 ここで、中途半端白髪になってしまったとしたら、またあんな嫌な思いをしなければならないのだ。
さて、どうしよう。 髪の健康のためには、にがりと椿油は続けなければならないが、白髪のためにはそれを続けることは許されない。 どちらをとるか? 思案のしどころである。
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