最近、交番に行く機会が多くなった。 すべて落とし物絡みである。 前回は運転免許証、前々回も運転免許証だった。 今月に入ってからも、一件免許証の落とし物があったが、たまたま来ていた刑事さんに預けたので、こちらから交番に出向く必要はなくなった。 ちなみにそれらの免許証は、すべて女性の物であった。
さて、今日の夕方こと。 「携帯電話が落ちていました」と、お客さんが持ってきた。 見ると、その携帯電話は仰々しくも毛皮に包まれ、真珠のような飾りが付いていた。 おそらくこれも、女性のものだろう。
auの携帯だったので、さっそくauに連絡して「持ち主に連絡してもらえないか」と頼んでみた。 するとau側は、「うちではそういうことをやっていません」と言う。 「じゃあ、こちらから連絡するから、家の電話番号を教えてもらえませんか?」 「お客様情報を、お教えするわけにはいけません」 「どうすればいいんですか?」 「警察に届けて下さい」 「そうですか」、そう言ってぼくは電話を切った。 まあ、au側としては当然の対応だろうが、持ち主に連絡してやったくらいいいではないか。 おかげで、また交番に行く羽目になった。
ぼくの会社から交番まで、歩いて10分少々かかる。 この寒い中、往復20分も歩くのは辛いものがある。 車で行ってもいいのだが、交番には駐車場がなく、嫌でも路上に駐車しなければならない。 交番に用があるのに、駐禁キップを切られたらたまったものじゃない。 しかたなく、ぼくは厚手のジャンバーを引っかけて歩いていくことにした。
交番に行ってみると、誰もいなかった。 しかたがないので、机の上に置いて帰ろうとすると、そこに『落とし物を持ってきた場合は、机の上におかないで、ここにある電話を使って○番にかけてください。』と書いてある。 そこで、○番に電話をしてみた。 「はい、○○警察署です」 「あのう、落とし物を届けに来たんですが、誰もいなくて…」 「ああ、今、そこの署員は事件があって出かけています」 「どうしたらいいですか?」 「他の署員を回しますので、しばらくお待ち下さい」 「しばらくって、どのくらいですか?」 「そうですねえ、15分ほどですかねえ」 「15分もかかるんですか? 仕事を抜け出してきているんで、もう少し早く来れませんかねえ」 「じゃあ、夜にまた来てもらえますか?」 この交番は、ぼくの家とは逆の方向に当たる。 わざわざ、交番回りをして帰るのも嫌なので、「じゃあ、待ちます」ということになった。
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