頑張る40代!plus

2004年01月16日(金) 練習場所(後編)

さて、そんなことを何週間やったろうか。
これをやり始めたのが、10月の下旬だった。
気がつくと、息が白くなっている。
指もかじかんで、満足に動かない。
ご存知の通り、ぼくは寒いのがまったくだめなので、寒さに気落ちしてしまった。
合わせて、飽きもでてきた。
そんなある日のこと。
いつものように練習をやっていると、突然雨が降り出してきた。
しかも、それと呼応するように、弦が切れてしまったのだ。
これが限界だった。
「下宿代ちゃんと払いよるのに、何でこんな馬鹿なことせないけんとか。ああ、もうやめた!」
ぼくは、ギターが濡れないように、上着で包み、ダッシュで下宿に戻った。
そして、下宿で再びジャンジャン、ガンガンやり始めた。
その後は、誰も文句を言って来る人はいなかった。

東京でそういう思いをしてきたので、こちらに帰ってきた時は嬉しかった。
もう、誰にも邪魔されることはない。
誰気兼ねなく、好きなことをやれるというのが、どんなに素晴らしいことかというのを、ぼくは身をもって知ったのだった。

その後、また障害が出てきた。
それは仕事である。
就職してしばらくしてから、帰りが極端に遅くなったのだ。
最初のうちは、週に何度か遅くなる程度だったが、そのうち遅いのが当たり前、という状況になってしまった。
そのため、練習する時間が取れなくなった。
いや、やることは出来たのだが、夜中にジャカジャカ、ガンガンやると、近所迷惑である。
東京にいた時も、さんざん周りに迷惑をかけたぼくだったが、さすがに夜中にはギターを弾かなかったくらいだから、そのへんはわきまえていたわけだ。

とはいえ、まったくやらなかったわけではない。
休みを利用して、練習することはあった。
が、毎日遅いため、練習よりもとにかく睡眠という状態で、一日中寝ていることもしょっちゅうだった。

また、楽器を扱う仕事だったので、ギターを弾くくらいは出来た。
だが、職場で歌をうたうわけにはいかない。
そのうち、だんだんギターとの距離が出来てしまった。
カチカチになっていた左の指も、いつしか軟らかくになり、握力も衰えていった。
たまにギターを弾いても、昔みたいに長時間続かない。
そのうち、興味が薄れていき、読書三昧の時代を迎える。
そして、読書三昧が終わり、興味はホームページへと移っていった。

ところが、ホームページをやっていく過程で、また弾き語りに興味が移っていった。
そう、「歌のおにいさん」などというコーナーを作ったからである。
昨年の夏頃から、ぼちぼちやり始めた。
とはいうものの、腕のほうは全盛期のそれではない。
全盛期に近づけるためには、また過酷な練習をやらざるをえない。
そこでまた「練習場所」ということになるのだが、今住んでいる家は、ちゃんと防音設備が施してある。
こういうこともあるかと思い、そういう家を探したのだ。
ところが、そういう家に住んでいても、やはり隣近所のことが気になってしまう。
どうもかつて経験したことが、心の傷として残っているようだ。
このへんのケアをやっていかなければ、身の入った練習が出来ない。
やはり、家は弾き語りの練習場所として適してないのだろうか。


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