昔からぼくは、女性に失礼なことばかり言って、いつもひんしゅくを買っていた。 その中でも、一番ひんしゅくを買う失礼なことは、相手の年を平気で言うことである。 まあ、そこには、ぼく自身が自分の年に無頓着だというのがあるが、女性の場合、自分の体重を聞かれるのと同じくらいに、自分の歳を聞かれるのが嫌らしい。
よく、女性に年を聞く場合、一般の男性は必ず「失礼ですが、おいくつですか?」と言う。 「失礼ですが」と言わなければならないくらいだから、女性に歳を聞くのは、本当に失礼に当たるのだろう。
ぼくは考えた。 失礼に当たるから、女性の歳を言うべきではない。 また、聞くべきではない。 では、女性をどういうふうにして量ればいいのだろう。 年齢で量ることがだめなら、実力で量るしかない。 しかし、実力と言っても、人それぞれの価値観に照らし合わせての実力だから、その見極めは大変難しいものになる。 誰がどう量っても変らない実力、それは経験しかない。 どのくらいの人生経験を積んだかが、その人の実力になる。 それを量る度合いは、やはりどれだけ生きたかということになってくる。 しかし、それは年齢ではないから、何歳などということは出来ない。 実力の世界なのだから、やはり日本式に武道を取り入れるのが一番である。
そこで、こういう表し方をしてみた。 女性としての顔かたちや考え方が身に付くまでの20年、つまり20歳までを入門者とする。 社会にとけ込むまでの期間、つまり21歳から30歳までを初心者(10級から1級まで)。 ここから段位が始まる。 31歳から33歳までが初段。 34歳から36歳までが二段。 37歳から39歳までが三段。 40歳から42歳までが四段。 43歳から45歳までが五段。 46歳から48歳までが六段。 49歳から51歳までが七段。 52歳から54歳までが八段。 55歳から57歳までが九段。 58歳から60歳までが十段。 61歳から70歳までが錬士。 71歳から80歳までが教士。 81歳から90歳までが範士。 91歳以上が免許皆伝。
こうすれば、いちいち「失礼ですが、おいくつですか?」などという失礼なことを言う必要もなくなる。 自己紹介する時や、他人から紹介してもらう時に、例えば田中さん45歳なら、「田中五段です」と言うなり言ってもらうなりすればいい。 受けた相手も「ほう、五段ですか。かなりの実力者ですな」と返せば、これは失礼ではなく、誉め言葉となる。
また、こうすることによって、誕生日のたびに「また一つ歳をとったね」などと言われたりすることもなくなる。 「昇段、おめでとうございます」などと言われるようになるだろう。
「じゃあ、お前は男性の場合も実力で言うのか」という意見もあるだろう。 しかし、それは心配しなくていい。 男性の場合は、ある面年齢を勲章と思っているところがあるから、今までどおり年齢を言っても大丈夫である。
ということで、ぼくはこれから女性の歳を書かないことにする。 すべて段位で表わそうと思っている。 エッセイにある『トキコさんは48歳』も、『トキコさんは六段』にしなければならない。 ちなみに、そのトキコさんは、その後順調に昇段していき、現在八段という高段位である。
そういえば、現在、ぼくの同級生のほとんどは六段である。 ということは、かなりの実力者になっているということだ。 同級生恐るべし、である。
ところでこの段位、決して『有段者=おばちゃん』という意味ではない。 そのへんは誤解のないように。
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