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2004年01月03日(土) 麒麟

中国には、四霊と呼ばれる霊獣がいる。
龍、麒麟、鳳凰、亀の4つである。
まあ、いると言っても、実在する動物は亀だけで、あとは想像上の動物である。
昔、これらの霊獣が見つかることは、良いことの前兆、つまり吉瑞だとされてきた。

中国の史書には、新しい王朝が誕生する前に、「龍が昇天した」「鳳凰の飛ぶ姿が確認された」「麒麟が捕まった」などといった記述がよく見られる。
過去、漢の劉邦を赤龍と呼び、諸葛孔明を臥龍と呼んだように、中国人は、偉大な人物を霊獣に喩えることが多い。
歴代の中国人は、それだけ霊獣を神聖視していたのだ。
また、中国で生まれた人相学も、龍顔や鳳眼は大吉相としている。

さて、今日のこと。
夕方、パートさんが帰る前に、ぼくは外にタバコを吸いに行った。
夕闇がかかる西の空に、一つの大きな雲があった。
その雲の形が、ぼくには四霊の一つである麒麟に見えた。
雲はゆっくりと、北に向かって流れていく。
その姿は、まさに天翔る麒麟の姿そのものであった。
ふと、ぼくは「これは吉兆だ」と思った。
となれば、今年はかなりいいことがある。
ぼくの心の中は、喜びで一杯になった。

「たかが雲の形にすぎないじゃないか。そう見えるのはあくまでもあんたの想像であって、それを吉兆とは大げさな」、と思われるかもしれない。
しかし、元々霊獣は人間の想像の上に成り立つ生き物である。
たとえそれが雲でも、その人が麒麟だと想像すれば、麒麟なのである。
例えば、ぼくの知り合いに、ヘビを龍と捉える人がいる。
その人は、ヘビを見たら、いつもいいことがあると言っていた。
なぜなら、彼にとってヘビは龍であるからである。
これと同じことだ。

タバコを吸い終え、職場に帰りながら考えた。
「吉兆って、どんないいことが起こるんだろう? もしかしたら、今年の願い事が叶うということだろうか?」
今年の願い事は、昨日の日記にも書いたように、『今年一年、無事でありますように』だった。
「ということは、吉兆というのは、今年一年が無事であるということだけじゃないか。
ああ、失敗した。せっかく願い事を叶えてもらうなら、もっと大きなことを願えばよかった…」
喜びで一杯だった心の中は、いらんことを考えたせいで、一瞬にして損した気持ちで一杯になった。


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