頑張る40代!plus

2003年12月15日(月) 落とし物 (後)

免許証を拾ったのは、今回で三度目である。
拇印を押した前回と、もう一回は6年ほど前だ。
その時は最悪だった。

拾ったのは今回と同じく12月だった。
ある日、什器の下に紙袋のようなものがあるのを見つけた。
しかし、その時は気にもとめなかった。
年末で毎日たくさんの商品が入荷していたため、それどころではなかったのである。

その紙袋に注目するのは、いよいよ暮れも押し迫った12月の末のことだった。
最初に発見した時から、もう2週間以上経過していた。
その頃になると商品の入荷も一段落していた。
「この間からあるんやけど、あの紙袋、何かねえ?」と、ぼくは売場の女の子に尋ねた。
「え、しんたさんが置いてるんじゃないんですか?」
「おれ、知らんよ」
「私も知りません」
「ゴミかねえ」
「かも知れませんね」
と、什器の下から紙袋を取り出し、開けてみることにした。

「あっ…」
中には手帳と小物が入っていた。
「誰のだろう?」と、手帳を開いてみると、そこから意外なものが出てきた。
運転免許証である。
今回と同じく、若い女性のものだった。
ぼくは再び売場の女の子に尋ねた。
「この人、知っとう?」
「知りません」
「困っとるやろねえ。すぐ知らせてやらんと」
ぼくはさっそく電話帳をめくり、その人の番号を探し当てた。

「もしもし、○○さんですか?」
「はい」
「こちらは○○店ですけど、免許証を見つけたんですが…」
「えっ!?」
一瞬の沈黙の後、相手は急に語気が強くなった。
「どこにあったんですか!」
「什器の下ですけど」
「何で今頃電話してくるんですか!?」
「何でと言われても、見つけたのは今日なんですが」
「私、無くしてから何度も、おたくの店に電話したんですよ!」
そう言われても、こちらにはそういう情報は入ってきてない。
仮にそういう情報が入ってきていたとしたら、当然探しただろうし、もっと早く紙袋を開けていただろう。

「警察にも届けて、再発行したんですよ。どうしてくれるんですかっ!」
『どうしてくれるんですか』と言われても、もうどうしようもない。
返す言葉もなく、こちらが黙っていると、相手は憮然とした口調で「すいませんでした。じゃあ、後で取りに行きますから」と言って、電話を切った。

善意で電話しているのに、まさか怒鳴られるとは思わなかった。
見つけるのが遅れたのは、確かにこちらの落ち度かもしれない。
しかし、そちらも何度電話したのかは知らないが、大切なものなのだから、電話で確認するだけではなく、実際に店に来て探すべきではないだろうか。
そんなことを考えていると、無性に腹が立ってきた。
さすがに、その日は一日、いい気分がしなかった。


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