2003年09月12日(金) |
休みの日は雨に祟られてばかりだ(後編) |
その呆気にとられている従業員をぼくは呼んだ。 「ねえ、ここに1巻から4巻まで出てるんですけど、残りはありますか?」 本の帯に全6巻と書いていたのだ。 「これは…、お取り寄せになりますけど」 「いいです。取って下さい。で、1巻から4巻までは今日買いますから」
その本が入ったという連絡が、日曜日にあったのである。 別に急いで買いに行く必要はなかったが、1巻から4巻までを一気に読んでしまったので、早く続きが読みたかったのだ。
さて、本を買ってから、すぐに帰ろうと思ったのだが、この本2冊だけでは、2千円に満たない。 このまま帰ってしまうと、駐車料金を払わなくてはならない。 館内をぶらぶらしていたが、別に欲しい物などない。 どうしようかと考えたあげく、食堂街で軽食をとることにした。
食堂街に行くと、新しくレトロ風のレストランが出来ていた。 店を選ぶのも面倒なので、その店に入った。 メニューを見ると高そうなものばかりである。 その時、ある品目が輝いて見えた。 『男の焼き飯 680円』 これで2千円の不足分を補える。
駐車場でレシートを見せると、係の人が「無料でございます」と言った。 1時間停めていたので、もしレシートがなければ300円を取られていたところだ。 ある種の満足感を覚えて、ぼくは店を出た。
それから寄り道せずに家に帰ったのだが、何か心に引っかかるものがある。 「ああ、そうか!」 しばらく考えて、やっと気がついた。 駐車料金である。 『男の焼き飯 680円』なんか食べなくても、駐車料金300円のほうがはるかに安いではないか。 こんな簡単なことに、なぜあの時気づかなかったのだろう。 間抜けにも満足感さえ覚えていた自分が情けない。
「これには、きっと何かがある。その何かが思考を麻痺させているに違いない」 外を見ると、さっきより降りが強くなっている。 雷もあいかわらずだ。 「そうか、この雨のせいだ。この雨が思考を麻痺させているんだ」 6月以来、休みの日はほとんどが雨である。 朝起きると、黒く重苦しい雲が立ちこめている。 この重苦しい風景が、気を重くして思考を麻痺させたのだ。
そういえば、この夏、雨に何度祟られただろう。 売出しのある日はいつも雨が降っていた。 涼しい夏。 おかげで夏物が売れない。 仕事だけではない。 いつも煩わしい事件は雨の日に起きている。 台風の数も例年に比べると、多いような気がする。 おそらく1年分の雨が、この夏降ったのではないだろうか。 もう、いいかげんにしてもらいたいものである。
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