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2003年08月21日(木) 実家を訪れた珍客

会社帰りに実家に寄った。
実家は団地の3階にある。
いつもぼくはここの階段を一気に駆け上っている。
ところが、最近運動不足のせいなのか、息が切れてしまった。
おまけに家の中に入るってからも、動悸が激しく、少し気分が悪くなった。

そんな時、さらに気分の悪くなる話を母から聞いた。
「今日ね、掃除しよったんよね。」
「ふーん」
「そこの台所の隅に、“ゴキブリほいほい”を仕掛けとったんやけど、それを捨てようとして持ってみたら重いんよ」
「何か入っとったんね?」
「うん。何と思う?」
「ネズミ?」
「いや」
「鳥か何かね?」
「そんなんじゃない」
「うーん。わからん」
「ヘビよ。ヘビ」
「ヘビ!?」
「うん。たぶん壁チョロを追いかけてきたんやろ。ヘビの前に壁チョロがおったけ」
「どこから入って来たんかねえ」
「わからんけど…」
実家のある団地には、3階に面している木や電柱などは一切ない。
そのため、他の場所から飛び移ることなどできない。
階段伝いに上ってきたとしても、玄関が開いてない限り、家の中には入って来られない。
ということは、壁伝いに這い上がってきて、いつも開いている台所の窓から入ってきたのか。
そうするためには、地面と垂直に建っている団地の壁を上ってこなければならない。
ヘビにはそういう芸当が出来るのか。

それはそうと、母はヘビが嫌いである。
その話をするたびに、ブルブルと震えていた。
ぼくとてヘビは得意なほうではない。
犬猫や昆虫のように子供の頃から親しんできたというのなら別だが、実際にヘビを見たのは、ヘビの猛毒に当たって死んだ人の話や、ヘビにまつわる祟りや悪霊の話を聞かされたあとだった。
そのために先入観でヘビを見るようになってしまっている。
つまり刷り込みされたわけだ。
その点は、伝染病を運ぶと聞かされたあとから、初めて見たネズミと同じである。

それにしても、おかしな話である。
ぼくは物心ついた時から、この土地に住んでいる。
子供の頃、このへんは今よりもずっと自然が多く、土の中で暮らしていたと言っても過言ではない。
しかし、その頃ヘビなどにお目にかかったことはない。
現在のような完全に加工された団地の中に、どうしてヘビなんかが出てくるのだろうか。
いったいいつの時点に、どこから移り住んできたのだろう。
わざわざ、こんな人間しか生活出来ないようなスペースに越してこなくてもよさそうなものなのに。
まさかカラスのように、残飯を求めて山から下りてきたわけではあるまい。
もしそうなら、ゴミ出しのたびにヘビにお目にかからなければならない。
それは嫌だ。


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