しかし、凄い量の水である。 バキュームクリーナーはタンクいっぱいに水が貯まると、自動的に電源が切れるような仕組みになっている。 もちろん大量の水を溜めることが出来るのだが、それでも3度水を捨てに行った。
何とか水が治まったのは、「しんたさん、バケツ!!」から1時間ほど経った頃だった。 時折天井からしずくは落ちてくるものの、もうバキュームクリーナーは用なしである。 ぼくが片付けようとした時だった。 応援に駆けつけていた本社の人間が、「ちょっと片づけるのは待って。まだ使う」と言った。 ほとんどの水を吸い取ったのに、何に使うんだろうと思っていると、本社の人間は「へえ、これすごいよ」「おお、ドンドン吸い込んでいく」などと言っている。 要は、このバキュームクリーナーを使いたかっただけなのだ。
さて、今回の水漏れだが、何で起こったかというと、聞けば実に情けない話だった。 化粧品コーナーの前に消火栓が設置してある。 この消火栓は、屋上から店内に繋がっている。 数日前のこと、ある業者がこの消火栓の点検のために、天井裏でホースを切り離した。 ところが、その業者は繋いで帰るのを忘れていた。 今回、別の業者が、前々週の雨漏りの点検のためにやってきた。 いろいろチェックをやった後に、その屋上の消火栓の元栓がしまっているのに気がついた。 これではいざという時に、消火栓から水がでないというので、その業者は元栓を開いた。 彼は、数日前に別の業者がホースを切り離しているなどとは、夢にも思わない。 水はホースを伝わり天井裏に向かった。 そして、大量の水がそこで流れた。 彼の予定では、化粧品コーナーの前にある消火栓のコックの手前で折り返し、再び屋上に水が戻ってくる、はずだった。 しかし、いつまで経っても水は戻ってこない。 どうしたんだろうと、下に行ってみると、蜂の巣を突っついたような大騒動である。 その時、彼はいったいどんな顔をしていたのだろうか?
今回の事件は、どう見ても人災である。 しかし、ぼくにはそう思えない。 なぜか4月の改装以来、水による被害が多発している。 いや、改装後だけではない。 雨漏り、地下水の浸水、あげくは酔っぱらいの寝小便と、以前からこの店は水の事件に泣かされてきている。 聞けば、この店の建っている場所は、かつて池だったということである。 おそらく、改装であまりにガタガタやったので、池の神の怒りに触れたのだろう。 それにしても、いつもながらネタに事欠かない面白い店である。
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