頑張る40代!plus

2003年07月14日(月) 月夜待 その2

ぼくはそれ以前に、何度かアマチュアコンテストに応募している。
しかし、一度も入選したことがなかった。
それは単に歌がよくなかったと理由からだろうと思っていた。
ということは、歌さえよければ入選するということだ。
そこで、ぼくはこの『月夜待』で挑戦してみることにした。
とはいえ、世はバンドブームであった。
「メジャーな、それもライブ有りのコンテストで、この曲が受けるはずがない」と思ったぼくは、他の道を探すことにした。

とはいえ、そんなコンテストというのは、当時どこにもなかった。
というより、仕事に追われてコンテストを探すどころの騒ぎではなかったのだ。
ようやく、探し当てたのは、30歳を超えた時だった。
音楽雑誌を読んでいると、そこにS社の広告「オリジナルテープ募集」という文字を見つけた。
よく読んでみると、テープ審査で何曲かをエントリーし、その中から入賞曲を選ぶというものだった。
「これなら仕事に差し支えないから大丈夫」と思ったぼくは、さっそくテープデッキに『月夜待』を録音し、S社に送った。

それから何ヶ月か経ったある日、S社からぼくの元に1通のはがきが来た。
そこには、「せっかく応募していただきましたが、当社の音楽性とは異なるので、今回は残念ながら不採用とさしていただきます」と書いてあった。
20代の頃なら、ここでくじけていただろう。
しかし、30代のぼくはくじけなかった。
また他の道を当たってみることにしたのだ。

その頃、ぼくは人事異動で、楽器部門専任からレコード部門兼任となった。
レコード部門を持つということは、レコード会社の人間と親しくなることだ。
そこで、ぼくは『月夜待』の良さをわかってくれる人を待つことにした。
1年後、ようやくそういう人が現れた。
P社の女性セールスM子だった。
メーカーのセールスがくるたびに、ぼくはオリジナルのことを話していた。
その話に食いついたのが、M子だった。
「ぜひ聞いてみたいです」
「じゃあ、今度テープ持ってくるね」
テープは、それ以前にS社に応募したものが残っている。
ぼくは翌日、忘れないようにそのテープを会社に持ってきておいた。
そして翌週、M子がきた時にそのテープを渡した。
「一度聞いただけじゃ、わからんかもしれんけ、何度か聞いてみて」
「はい、わかりました」
M子はテープを持って帰った。

そして次の週。
M子は目を輝かせてやってきた。
「主任、聞きましたよ。いい歌ですね。私ジーンときました」
それを聞いてぼくは下心を出した。
「そうか。そんなによかった?」
「ええ。とっても」
「実はね。これレコード化したいんよ」
「この歌をですか?」
「うん。レコード会社にテープ持って行って、聞いてもらうのが一番なんやろうけど。なかなかそんな暇がなくてね」
「そうでしょうね。いつも主任は忙しいそうだから」
「で、お願いがあるんやけど」
「何ですか?」
「それ、本社に行くことがあったら、持って行ってほしいんよ」
「ああ、そうか。その方法があったか。いいですよ。私、制作に知った人がいますから。売り込んできます!」
「ほんと? じゃあ、お願いします」
ということで、『月夜待』はP社に持ち込まれた。


 < 過去  INDEX  未来 >


しろげしんた [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加