| 2003年06月26日(木) |
ショートホープ・ブルース(歌詞編 上) |
前にも話したが、ぼくは高校時代から8年間想い続けた人がいた。 『ショートホープ・ブルース』を書いたのは21歳の時だから、その真っ最中に書いたということになる。。 当然、ここに出てくる『君』はその人のことだ。 その人のどこが好きだったのか? まあ、そういうことは一概には言えないが、その要素の一つに頬というのがあった。 その頬を見ると、なぜか落ち着いた。 今で言う『癒し』ということになるだろうか。 その頬を見るたびに、優しくなれる自分がいた。 この歌詞は、そんな自分を思い出しながら作ったものである。
さて、歌詞と言うくらいだから、当然この歌詞には曲がついている。 あらかじめストックしてあった曲を引っ張り出して、この歌詞で歌ってみた。 数ある曲を引っ張り出してみたのだが、何か一つピンと来ない。 そこで、新たに曲を作ることにした。 モチーフはサディスティック・ミカ・バンドの『さよなら』という曲だった。 いろいろとギターコードをいじくりながら作った。 出来上がってみると、なかなかいい。 曲が出来た直後、「これは人に聞いてもらわないと」と思い、さっそくギターを持ち出して、代々木公園で歌いに行った。 ところがである。 歌のおにいさんを聴いてもらったらわかるが、この曲は派手な曲でない上に、ガンガンやる曲でもない。 そのため、あの広い代々木公園では誰一人見向きもしなかった。
数日後、何人かの友人の前で歌う機会があったので、この歌をうたってみた。 歌い終わったあと、「どうせ目立たん歌やし」などと悲観していると、友人の一人が「もう一度歌って」というアンコールがかかった。 二度目を歌い終わったあと、その友人が言った。 「この歌、いけるよ。ポプコンか何かに出してみたら?」 「そんなに良かった?」 「ああ。コード進行がユニークだ」
おれを聞いて気をよくしたぼくは、この曲でポプコンを受けようと思い立った。 ところがである。 この曲は単調な曲ではあるが、細かい節回しが所々にある。 そのため、歌うのが非常に難しいのだ。 もし、その節回しを適当にやってしまうと、この歌は生きてこない。 そこで、練習する必要が出てきた。 しかし、狭い下宿で練習をしていると、下宿のおばさんからは小言を言われ、他の部屋の人たちから白い目で見られる。 スタジオでも借りて、とは思ったものの先立つものがない。 考えたあげく、思いついたのはトラックの荷台であった。
当時、ぼくは運送会社でアルバイトをしていた。 帰りにいつもトラックの荷台に乗せてもらっていたのだが、そこでだったら、どんなに大きな声を出しても誰も咎めない。 ということで、トラック荷台はスタジオと化した。 バイトは3ヶ月半やったので、その間毎日荷台で歌っていたことになる。
ところがこの曲、歌えば歌うほど難しくなっていくのだ。 それまで歌ってきた曲はすべて消化出来ていたのだが、この歌だけはどうも消化出来ない。 そのうち、ぼくはこの歌をうたうことに嫌気がさしてきた。 バイトを辞めた頃は、すでに諦めていた。
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