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2003年05月18日(日) 無表情な子供たち 後編

その後も彼らはゲーム機のところから離れないでいた。
公衆電話をかけようと、財布を取り出したおじさんを無表情に見つめていた。

ここでぼくたちは一つの疑問を持った。
「この子たちの親はどうしたんだろう?」
ここまで無表情でおれるいうことは、おそらく家庭環境に問題があるに違いない。
そこから話が大きくなり、「学校も行ってないし、もしかしたらこの子たちは家出してきたんじゃないか」ということになった。
「あそこの公園で寝泊まりしとったりして」
「顔とか垢が一杯たまっとるやん」
「じゃあ、保護してもらわんと」
といって、土・日に開いている児童相談所なんて聞いたことがない。
こうなれば警察である。
さっそく店長に事情を話し、警察を呼んでもらうことにした。

15分ほどして、警察の人がやってきた。
「どの子供ですか?」
「あそこにいます」
「はい、わかりました」
警察の人は、子供たちに向かって何か言っていた。
ところが、子供たちは、警察の話を聞いているのかいないのか、あいかわらず無表情な顔をしている。
数分後、警察が何かを渡した。
子供たちは、それをポケットに入れると、店から出て行った。

それを見届けてから、ぼくは食事に行った。
1時間後、ぼくが食事から戻ってくると、アルバイトの子がぼくを呼びに来た。
「しんたさん、これ」
それは傘を入れるビニール袋だった。
中に空気を入れて風船のように膨らませてあった。
それが、いくつもある。
「それ、どうしたん?」
「上から降ってきたんです」
「上から…、駐車場?」
「はい」
「もしかしてあの子たちの仕業?」
「そうなんです」
ぼくは2階に上がって行った。
そこにあの子供たちがいた。
一番上の兄ちゃんはおらず、いたのは二番目から下だった。
例のビニール袋を持って遊んでいる。

「あんたたち、まだ帰ってなかったと?」
彼らの動きが止まった。
ぼくが「さっきお巡りさんから、帰れと言われたんやないんね?」と言うと、二番目の兄ちゃんは首を横に振った。
「あの時、あんたおらんかったんかねえ?」
彼は首を縦に振った。
ぼくは視線をその弟にむけた。
「お巡りさんから、何か言われたろ?」
「・・・」
弟は他の方向を向き、口をポカンと開けて黙っている。

「・・・。とにかく、ここは車がたくさん来るけ危ない。下に降りなさい」
やっと言うことを聞いた。
彼らは、ぼくの後を付いてきた。
階段の下まで行ってから、ぼくは言った。
「もう遅いけ、今日は帰りなさい」
「・・・」
3人とも口をポカンと開けて黙っている。
「早く帰らんと暗くなるよ」
「・・・」
彼らはしばらくそこに立ち止まっていた。
「早く帰りっ!」
ようやく動き出した。
3人とも店の外に出ていった。
それ以降、彼らは店の中に入ってこなかった。

それにしても、あの無表情さというのは何だろう。
他の子供たちには見られない表情である。
やはり、育ってきた環境なんだろうか。
元々そういう性格なのかもしれない。
不思議なことに、この子たちがいるだけで、なぜか場の雰囲気が変わるのだ。
何か妙なものを背負っているのかもしれない。
今後、この問題で悩まされそうである。


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