昨日の夕方のことだ。 タバコを吸おうと、店の外に出た。 その時、少し煙ったようなにおいがしてきた。 「ああ、雨が降るな」 ぼくはそう思った。 それから、2時間後に雨が降り出した。
ぼくはいつの頃か、雨が降るのを予測できるようになった。 別にそういう能力があるわけでもなんでもない。 ただ気がついただけである。 先ほど言ったように、煙ったようなにおいがする時に、必ず雨が降るのだ。 こういうにおいがする時は、だいたい小雨の時が多い。 低気圧が近づく時は、また違ったにおいがしてくる。 海の近くに住んでいるからかどうかは知らないが、低気圧が近づくと潮のにおいがしてくるのだ。 その潮のにおいの元が、かつての死の海・洞海湾だと思うと、あまりいい気分はしないのだが。 北九州工業地帯が華やかなりし頃は、潮のにおいが隠され、重苦しい工場のにおいがしていた。 ぼくは以前、低気圧が近づくたびに頭が痛くなっていたが、それは工場のにおいのせいだったのだろう。
ところで、なぜ低気圧が近づくと潮のにおいがするのか。 今までその理由は、洞海湾がぼくの住む場所の東側に位置しているためだと思っていた。 雨の日はだいたい東風が吹くからだ。 しかし、その推測は違っていたようだ。 今ぼくが勤めているところから見れば、洞海湾は西に位置する。 それでも、低気圧が近づくと潮のにおいがするのだ。 ということは、低気圧東風説というのは成り立たなくなる。 おそらく、低気圧が潮のにおいを呼ぶのではないだろうか。
まあ、ぼくは理科が大の苦手なので、そういうことを詳しく調べてみようとは思わないが、もしかしたら、においと気象とは何か特別なつながりがあるのかもしれない。 寒気団がくる時には、寒いにおいがする。 また、夏場夕立が降る時は、決まって石のようなにおいがするものだ。 ぼくがまだ気がついてないだけで、本当は各季節ごとに天気のにおいというのがあるのかもしれない。
寒いにおいで思い出したが、ぼくは寒がりで、冬という季節はすべて寒いと思っている。 そのため、冬になるといつも体が縮こまっているために、寒さの程度がよくわからない。 そこで、このにおいを頼りにすることがある。 家から一歩外に出た時にこのにおいがしたので、いったん家に戻って厚手のセーターに着替えたことがある。 まあ、厚手のセーターを着込んでも、ぼくには同じ寒さなのである。 ところが、会社に行ってわかったのだが、その日はやはり寒かったようだ。 他の従業員も寒いと言って、みな着込んで出社していた。
さて、今は昨日から降り続いた雨もやんでいるが、今はどういうにおいがするんだろう。 ・・・ 今窓を開けにおって来たが、なぜかかび臭い。 このにおいでは、明日の天気は占えん。
|