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2002年10月14日(月) 愛車、当て逃げされる

今日は朝から忙しかった。
別に、よく売れたから忙しかったわけではない。
午前中一人だったため、修理の受付、部品の受付、現品の箱詰めなど、全部ぼく一人でやらなければならなかった。
それで忙しかったわけである。
さらに、ここ数日続いている鼻風邪が疲れを倍増させた。

午後2時前、やっとのことで一人から解放された。
パートさんが出勤してきたのだ。
しかし、そのパートさんの挨拶代わりの一言が、ぼくの疲れをピークにした。。
「しんちゃーん、こんにちはー」
「ああ、こんにちは」
「オカマ掘られとったね」
「は?」
「ぶっつけられたんやろ?」
「何が?」
「しんちゃんの車」
「えっ!?」
「何ね、知らんかったと?」
「知るわけないやん」
「かなりひどいよ」
ぼくは、頭がボーっとしてしまった。
「ちょっと来て」
ぼくはパートさんといっしょに、車を停めている場所に行った。

「ほら」とパートさんが言った。
これはひどい。
後部のバンパーが見事にへこんでいる。
そのへこみは上までつながっていて、ナンバープレートにまで達している。
ぼくは、これは自分の車じゃないのではないか、と一瞬疑った。
しかし、ナンバーは見慣れたナンバーだ。
当て逃げである。
ここまでひどい傷なら、修理代は優に10万円を越すだろう。
頭の中は、当てられた悔しさよりも、どうお金を工面するかということでいっぱいだった。
来年は車検である。
そのための貯金を崩すわけにはいかない。
「ボーナスで払うか」
しかし、ボーナスは各種ローン(真面目な意味の)の支払いで回らない。
「どうしよう」
迷った挙句、ぼくは保険屋さんに連絡した。
「当て逃げされたっちゃ」
「当て逃げ?!保険使うんか?」
「うん」
「そんなにひどいんか?」
「うん、かなりひどい」
「この間更新したばかりなのに。おまえ等級落ちるぞ」
「仕方ないやん」
「じゃあ、とりあえず警察に連絡せ」
「わかった」
ぼくは電話を切り、警察に連絡した。

「はい、警察署です」
「あの、当て逃げされたんですが」
「場所は?」
「○○町です」
「お名前は?」
「しろげしんたです」
「わかりました。すぐに係のものを行かせます」

15分ほどして警察官がやってきた。
「車はどこですか?」
「こちらです」とぼくは警察官を車を停めている場所まで案内した。
警察官はぼくの車を見るなり、「これはひどいなあ」と言った。
「おそらく、トラックか何かでしょうなあ」
「そうみたいです」
「でも、犯人は見つからないと思いますよ」
「犯人なんかどうでもいいです。一応警察に届けたら、保険がおりると保険屋さんに言われましたから」
「わかりました。車検証と免許証を出して」
警察官は汚い字で、調書を書いていった。
書き終わると警察官は、「じゃあ、事故としてあげときます」言って帰って行った。

それから20分ほどして、修理屋さんが来た。
彼もぼくの車を見るなり、「これはひどい」と言った。
「どの位かかりそうですか?」とぼくが聞くと、「ざっと見積もって13万円ほどやろうね」と修理屋さんが言った。
「やっぱりね」
「免責はどうなっとる?」
「ああ、免責は0です」
「じゃあ、手出しせんですむね」
「先々週、その保険にしたんです」
「ああ、それはよかった」
「今日持って行きますか?」
「いや、明日入庫する。代車が明日戻ってくるけ、ちょうどいいやろ」
「じゃあ、お願いします」

さらに1時間後、保険屋さんがやってきた。
「おれこんな仕事しよるけど、修理前の車見るの初めてっちゃの」
「じゃあ、じっくり見てください」
そして、彼も「これはひどい」と言った。
「修理屋さん、どの位かかると言いよった?」
「13万円ほどかかるらしいよ」
「そうやろの。この傷ならそのくらいかかるやろ」
「まあ、よろしくお願いします」

明日からしばらくの間、愛車とお別れである。


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