健康診断の時、毎回言われることがある。 それは血圧のことである。 案の定今回も、「血圧が高いですねえ」と言われた。 そこでぼくは、「はい、健康診断の時だけ高いです」と答えた。 係の人はムッとしていた。 だけど、血圧が高いのは、本当に健康診断の時だけなのである。 家で計ると、ちゃんと正常値を示しているのだ。 「いったいどちらが本当なんでしょうね?」 健康診断の係員は答えられなかった。 その程度だろう。 だいたい建前だけの健康診断なんだから。
さて、今回の健康診断で愕然としたことがあった。 それは、視力が低下していたことだ。 前回は右0.9左0.8だったのが、今回は両眼とも0.7になっていた。 ぼくの健康診断史上最低の記録である。 ぼくは小学生の頃から目がよく、20代前半まではだいたい1.5〜1.2だった。 20代後半から若干視力が落ちたものの、昨年までは1.0と0.9を行ったりきたりしていたのだ。 別に0.7ぐらいなら、そんなに愕然とする必要はないじゃないか、と思われる方もいるかもしれない。 しかし、実は今回はっきり見えていたのは0.3までで、それ以上は勘に頼っていたのだ。 左にいたっては乱視が入っているので、「C」の文字が揺れる揺れる。 「もう一回いいですか?」と、何度かやり直しさせてもらい、0.7に行き着いたのである。 ついにパソコンライフがたたってきたか。 近々運転免許証の更新があるので、早めに治しておかなければ。
さて、レントゲン撮影のため、車の外で順番待ちしている時だった。 ノソノソと猫が歩いていた。 ぼくは猫を見ると、反射的に「チチチ」と舌を鳴らして呼ぶ癖がある。 いつものように「チチチ」と猫を呼んでいると、猫は立ち止まってぼくのほうを見た。 そしてそのまま座り込み、毛づくろいを始めた。 そこでぼくは猫のほうに寄って行った。 ノラだったが人馴れしているようで、ぼくが寄って行っても逃げようとはしなかった。 しかし、猫というのは指を突き出すと、どうしてにおってみるのだろう。 この猫もそうだった。 目をうつろにして、鼻をピクピクさせている。 ただ他の猫と違っていたのは、この猫はにおうだけではなく、ぼくの指先を舐め出したのだ。 ザラザラした猫の舌が、ぼくの指に触ってくる。 あまり感じのいいものではない。 朝は健康診断のため食事をしてないのに、どうしたんだろう。 検尿した時、尿の飛沫がかかったのだろうか。 それとも、朝方、お尻を拭いた臭いが指先についていたのだろうか。 それにしても、猫はおいしそうに舐めている。 そのどちらにしても、ぼくの体に異常はないことになる。 猫も健康な尿や便だから舐めるのである。 ということは、来年からは健康診断を受けなくてもいい。 猫に尿や便を舐めさせればいいのだ。 猫が無事に尿や便を舐めたら健康。 渋ったら異常あり。 検査員「ミーちゃん」とでもして、印鑑代わりに肉球を押させるか。
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