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2002年09月27日(金) 退職前夜 その1

前の会社にいた時は、今の会社よりもずっと休みが少なく、一週間に一度休めればいいほうだった。
その会社は、朝が早く、さらに夜も遅くまで働かなければならなかったので、疲れは今の会社の比ではなかった。
しかも疲れは体だけではなかった。
責任も今よりずっと重かったので、心労も重なる。
ということで、たまにある公休日は死んだように眠っていた。
しかし、休みの日にも会社からひんぱんに電話がかかってくる。
「今から出て来い」ということがしばしばあった。

前の会社を辞める2ヶ月前、平成3年の9月初旬のことだった。
ぼくがエアコンを紹介販売したお客さんから、クレームが来たことがある。
その日ぼくは休みだったのだが、午後4時頃店長から電話が入り「今から来てくれ」と言う。
ぼくは嫌々ながら会社に行った。
会社に着くと、まだそのお客さんはいた。
お客さんはぼくに「しんたさん、休みのところわざわざすいませんねえ。配達の人の応対が悪くてねえ。悪いけど、この間買ったエアコンはすべてキャンセルさせてもらうから」と言った。
そのお客さんは大口で、各部屋に1台ずつ、さらにそのお客さんがやっている事務所にもエアコンを付けたため、総額は200万円を超えていた。
200万円もキャンセルされたら一大事と、店長は慌ててぼくに電話してきたのだった。

とりあえず、ぼくはお客さんにクレームになったいきさつを聞いてみた。
その日は工事の日だった
朝一番に取り付けサービスのほうから電話がかかったらしい。
「今日の工事の件ですが、お昼からになりますが、ご都合のほうはよろしいですか」
「ああ、お昼からですか。わかりました。よろしくお願いします。あ、それと、悪いんですが、来る時にパテを余分に持ってきてもらえませんか」
「パテですね。わかりました」
そう言って電話を切った。
ところが、電話をかけた者が、パテの件を工事の人に伝えてなかったのだ。
お客さんが工事の人に「パテを下さい」と言うと、工事の人は「パテですか?さしあげるほど持っていません」とぶっきらぼうに言った。
「さっき電話で言ったんですけどねえ」
聞いてないなら聞いてないで、その場で電話するなりして確認すればよいものを、その工事の人は強い口調で「聞いてませんよ!」と答えた。
それでお客さんが切れたのだった。
「もういい。帰ってくれ」ということになった。
工事の人が帰ってしばらくしてから、お客さんが店に乗り込んできたのだった。

このお客さんのクレームはこれが初めてではなかった。
ぼくが契約の話を詰めている時にも、エアコンの売場の者とトラブルを起こしたことがある。
その日はちょうど台風が接近している時で、激しい暴風雨の中、ぼくはびしょ濡れになってお客さんの家に謝りに行った。
その誠意を認められて、何とか契約までこぎつけたのだ。

ぼくは「たかがパテひとつのことで」と思いながらも、とにかくお客さんに謝った。
しかし、お客さんはへそを曲げたままだった。
「今度という今度は許さん。しんたさんに協力してあげられなくて悪いけど、今回はキャンセルする」
そして店長に「教育がなってない!」と言って帰っていった。

その後、それが問題になり、会議の席でも「クレームの件をどうするか」というのが議題になったほどだった。
その席上で、店長はぼくに向かって「おまえが一番悪い」と言った。
しかし、どう考えても、今回の件はぼくが悪いとは思えない。
ぼくが憮然とした顔をしていると、店長はさらにぼくに難癖をつけてきた。
「だいたい、おまえの気配りが足りんからこういうことになるんだ。そんなことだから、部門の売り上げも悪いだろうが」
「どこの部門も夜遅くまで頑張って仕事をしとるのに、おまえはさっさと部下を帰らせやがって」
おまえが、おまえがの連発だった。
しかし、今回のクレームと売場の数字とは何も関係ないし、ぼくの部門は女子社員ばかりだったので早く帰さなければならない。

結局クレームの件は、「しんたとエアコンの売場の者で、ちゃんと解決しろ」と言うことになった。
しかし、売場の者は何一つ行動を起こさなかった。
ぼくひとりが駆けずり回り、何とかキャンセルを食い止めた。
一方的に個人を責めたて、責任を押し付けて良しとする会社の体制、チームワークのなさ、その他もろもろのことを考えていくうちに、ぼくは会社に幻滅感を抱いてしまった。


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