今日は、月曜日ということもあり商品の入荷が少なかった。 また、昨日で売出しが終わったため、午前中からわりと暇だった。 午後になってからも状況はあまり変わらず、「さてちょっと早いけど、食事にでも行こうか」と思っていたところ、例の万引きじいさんが来たとの情報が入った。 店の外にあるベンチに座って、こちらをしきりに窺っている。 隙あらば、ということだったんだろう。 ぼくは、わざとじいさんの目に付くところに立っていた。 じいさんは、ぼくに気づくと慌てて下を向いた。 じいさんを牽制した後で、ぼくは、じいさんが立ち寄りそうな売場に声をかけ、警戒するように言った。
それから一時してからのことだった。 一通のメールが、ぼくの携帯電話に入った。 着信音で、そのメールが、ホークスTOWNからのメールであることがわかった。 「あれ? 今日はデーゲームやったかのう」と思いながらメールを開いてみると、そこにはショッキングな文字が躍っていた。 『秋山幸二引退表明』 ぼくは7月頃から、なんとなくそんな気がしていた。 以前の秋山と何か違う。 打球も伸びないし、守備にも精彩がない。 これはシーズン後の引退もありえるなあ、と思っていたところだった。 ああ、ついに引退か。
夕方のローカルニュースは、どのチャンネルを回しても「秋山引退」一色だった。 王監督のコメント、選手のコメント、秋山のお母さんのコメント、街の声などなど。 あのNHKでさえ、時間を割いて秋山の特集をやっていた。 仮に主砲小久保が、今やめたとしても、ここまで大きく扱ってはくれないだろう。 それだけ、秋山の業績は大きかったと言える。 たしかに西武から移籍してきた当初は、覇気を感じず、だらしなく映っていたものだった。 しかし、年を追うにつれ、秋山はチームに、いや九州になくてはならない存在になっていった。 3年前、西武の松坂から、顔面にデッドボールを受け骨折した時だって、翌日彼はベンチに入っていた。 われわれファンとしては、それだけでもありがたかった。 彼の記録もさることながら、それ以上に存在感のある選手だったと言えるだろう。
ところで、ぼくが秋山のことを思う時、どうしても思い浮かぶ人がいる。 それは、かつて史上最強のチームと言われた西鉄ライオンズの主力打者、大下弘である。 秋山と大下、この二人の選手はよく似ている。 どちらもホームランバッターである。 どちらも存在感のある選手である。 また、どちらも全国区の選手になった後に、この福岡の地にやってきて、チームの黄金期作りに力を尽くした選手である。 そして、チームの黄金期が去った後に、引退した選手である。 (ぼくとてホークスはこれからのチームだと思う。しかし、今年の戦い方を見た限りでは、一時代が終わったと思わざるを得ないだろう)
秋山はこれからどうするのだろうか? 本人は未定だと言っていた。 まあ、あれだけの選手だから、いろいろ声もかかるだろうとは思う。 ただ間違っても、解説だけはしないでほしい。 無駄口を叩かない人には、解説者は勤まらないのだから。 まだまだマスターズリーグに行くには早すぎる。 ぼくとしては、ダイエーに残って、次の黄金期を作る後進を育ててもらいたいと思うのだが。
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