頑張る40代!plus

2002年08月22日(木) 再び万引き

一昨日、以前から書きたかった「万引き」の話を書き終え、一安心していたのだが、今日また「万引き」について書かなければならなくなった。

ここ最近、一人のじいさんが頻繁に現れるようになった。
そのじいさんは、かつて店に来てはカラオケテープや工具、はては老眼鏡まで万引きしていたじいさんである。

何年か前に、一度このじいさんを捕まえたことがある。
ぼくがいるのに気づかず、じいさんはカラオケテープを2本、ズボンのうしろポケットに入れた。
そして、そのままて外に出たのだ。
ぼくは、追いかけて行って「ちょっとすいません」と言った。
じいさんは「はっ!」と驚いたようだった。
「そのまま動かんで下さい」と言い、じいさんのうしろポケットから、カラオケテープを取り出した。
「これ、まだ会計がすんでないですよね」と言うと、じいさんはうつろな目をして、ぼそぼそとわけのわからないことを言い出した。
「こちらに来て下さい」と、ぼくはじいさんを事務所まで連れて行った。

事務所でもじいさんは、相変わらずわけのわからないことを言っている。
しかたがないので、店長は警察を呼んだ。
警察が来ると、じいさんは急にぼけたふりをしだした。
警察が「おじいさん、名前は」などといろいろ聞き出していくうちに、このじいさんが何度も警察に連行されていることが判明した。
万引きどころか、神社のお賽銭まで拝借していたという。

あれからしばらくじいさんの顔を見なかったのだが、1ヶ月ほど前から、また現れるようになったわけである。
従業員はもちろんじいさんの顔を知っているので、じいさんがやってくると従業員同士連絡を取り合い、非常線を張った。
じいさんは、ぼくらが見張っているのに気づくと、すぐに外に出た。
そしてしばらくすると、また店に入ってくる。
何度かこちらの隙を狙っているが、だめだと悟ると、その日はすごすごと帰って行く。
何度かそういうことがあった。

そして今日、ぼくたちの隙を突いて、ついにやったのだ。
しかし、悪いことは出来ないものである。
うちの女子従業員が、しっかりその現場を見ていた。
ぼくが事務所から帰ってくる途中に、「しんたさーん」と呼ぶ声がする。
声のするほうを見てみると、その子が万引きのサインを出した。
「誰?」
「じいちゃんです」
ぼくは追いかけて行った。
店の外に出ると、じいさんはベンチに腰掛けていた。
何気なくじいさんの横に行ってみると、じいさんのポケットからカラオケテープが見えていた。
ぼくは「すいません」と言って、じいさんのポケットからテープを取り出し、「これは何ですか」と聞いた。
じいさんは「ああ、これを買おうかどうしようか迷っとった」などと、またしてもわけのわからないことを言った。
「お客さんは、買おうかどうしようかと迷ったら、店の外に商品を持って出るんですか」
「ははは、そりゃおかしいなあ」
「とにかく、こちらに来て下さい」と、事務所に引っ張っていた。

事務所には店長代理がいたのだが、じいさんの顔を見るなり、「また、あんたね」と呆れ顔で言った。
代理がいろいろとじいさんに聞きただしている間に、ぼくは警察に連絡した。
「はい、警察です」
「○○店ですが、万引きなんですけど」
「お待ち下さい」
担当の署員が出た。
「あ、○○店です。また万引きなんですが、常習者なのでお願いします」
「常習者? Hさんですか?」
ぼくは噴出しそうになった。
Hさんとは、この日記に何度も登場している、酔っ払いのおいちゃんのことである。
警察も、酔っ払いおいちゃんにはいろいろ迷惑しているので、相手にしたくなかったのだろう。
「いえ、Hさんじゃありません。お年寄りですけど」
「70歳くらいの人ですか」
「はい」
「ああ、そうですか」
心当たりがあるようだった。

しばらくして、警察官がやってきた。
「名前は?」
「○○です」
「生年月日は?」
「大正○年・・・です」
「住所は?」
「ああ、わかりません」
「わかりません? あんた、自分の住所がわからんとね」
「引っ越したもんですから」
「じゃあ、電話番号は?」
「わかりません」
あとは何を聞いても「わかりません」である。
警察官はムッとした顔をして、「じゃあ、わかるまで警察におってもらおう」と言って、じいさんを連れて行った。
警察官が帰った後、代理がぼくのところに来て、「あのじいさんは出入り禁止にするけ、見つけたら追い出して」と言った。
しかし、追い出してもまたくるもんなあ。

ところで、その後、じいさんはどうしたんだろう。
あいかわらず、「わかりません」で粘っているのだろうか。
とすれば、警察からは出られてないことになる。
普段は酔っ払いの親父に迷惑し、今日はボケもどきのじいさんに困惑している。
警察もいろいろと大変である。


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