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2002年08月19日(月) 万引き その2

何年か前、「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」という番組に相川七瀬がゲストで出た時に、万引きの話になったことがある。
ダウンタウンの「どんなものを万引きしたのか」という質問に、相川は「タンスを盗ったことがある」と答え、ご丁寧にその手口まで披露していた。
ふざけるな、何が万引きだ。
タンスを盗むなど、立派な泥棒である。
世の中狂っている、としか言いようがない。
こんな話題で笑いをとろうとする司会者は、万引きに対する罪の意識など、これっぽちも持ち合わせていないのだろう。
こういう放送を、公然と流す放送局も放送局だ。
「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」といえば、若者向けの番組である。
ただでさえ、万引きを罪と思っていない若者が多いのに、こんなことを公然と流していいのだろうか。
フジテレビは、その姿勢を問われるべきである。
この放送を見てから以降は、ぼくは「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」はおろか、ダウンタウンの出ている番組も見ないことにした。
もちろん、相川の歌も聞かない。

話は変わるが、数年前に、万引きで生計を立てている夫婦がよく来ていた。
この夫婦は「万引き夫婦」と呼ばれ、当時ぼくの働いていた店の近辺では有名だった。
この夫婦はCDを主に万引きして、その他の商品には見向きもしなかった。
CDを狙ったのは、換金目的からである。
また他の商品に手をつけなかったのは、足が付くからである。
夫はいつも酔っていた。
焦点の定まらない目で店員にクダを巻いて、その間に嫁が盗る、という手口だった。
ぼくの売場も何回か被害にあっていた、
そのため、彼らが来るといつも神経をそちらに集中させていた。
それを察した夫がいちゃもんをつけてくる。
一度、ぼくのネクタイをつかみ、「表に出ろ」と凄んだことがある。
「おう、出ろうやないか」とぼくが応じ、入り口までいっしょに行くと、夫が突然「ぼくたち盗ってません」と言い出した。
ぼくが「誰も盗ったとか言うてないやろ」と言うと、夫は「本当です。盗ってません」と重ねて言った。
しかし、ぼくはその時、彼らが盗ったのを知っていた。
ただ現場を押さえていなかったため、「盗ったやろ」と言えなかったのだ。
嫁の腹が軽く膨らんでいたのである。

翌日、またその夫婦はやってきた。
「昨日はすいませんでした」と言いながら、また「本当に盗ってないです」と言った。
それから1年近く、週に何度か訪れるようになった。
こちらも注意していたので、彼らもなかなか手を出せない。

ある日、彼らはちょっとしたこちらの隙をついて、CDを盗った。
その万引き現場が、しっかりとビデオテープに録画されていた。
さっそくぼくは警察に連絡した。
やってきた警察の人は、そのビデオを見るなり、「お、これはNやないか」と言った。
「こいつはCD専門なんよ」と言い、「また来たら連絡して」と言って帰っていった。
翌日、開店と同時に、その夫婦はやってきた。
その時は、まだCDのケースにカバーをかけていたので、あっさりと帰った。
ぼくが「来ました」と警察に連絡すると、10分ほどして本署から5人ほどの刑事がやってきた。
ぼくが刑事に事情を話しているところに、再び万引き夫婦はやってきた。
「あいつらです」とぼくが目で合図すると、刑事は散らばった。


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