今日は8月11日か。 ぼくが小学生の頃、この日は登校日だった。 先生が黒板に山の絵を描いて、「7月21日がふもとで、8月1日の登校日が5合目付近、そして今日8月11日はちょうど山頂にあたります」と言っていたのを覚えている。 祭や海水浴といった夏休みの楽しいイベントは、大半がこの日以前、つまり前半で終わってしまう。 一つ残ったイベント、盆踊り大会も、後4日すれば終わってしまう。 それから後は台風が来たり、宿題に縛られたり、あまり面白かったという記憶はない。 高校野球も、次の登校日である8月21日頃には終わってしまう。 それを過ぎると、「夏休みはあと○日しか残ってない」という焦りと寂しさでいっぱいになる。
さて、いよいよお盆である。 そういえば、最近ぼくの住んでいる地域は盆踊り大会をやらなくなった。 いろいろ事情があるのだろうが、一番大きな理由は、高層マンションやアパートが急に増えたため、この地域を故郷にしている人の割合が極端に少なくなったということだ。 つまり、お盆になると、この地域に住む人の多くは故郷に帰るということである。 これでは盆踊りも出来ない。
地域の連帯感がなくなったこともある。 以前は町内を細かく区切っていたため、町内会長がいろいろ世話を焼いてくれていたが、区画整理をしてからこちらは、より町内が広域になったせいもあり、手が回らなくなった。 何せ、ぼくの住む1丁目だけでも、5千人以上の人が住んでいるのだから。 その中には外国人もいる。 習慣や宗教の違う人たちに、「盆踊り大会に参加してください」と言っても、所詮無理な話だろう。
また、高層の団地がたくさん建ったために、公園の数が減ってしまった。 以前は各町内に一つの割合で公園があったのだが、今は広いだけがとりえの、とってつけたような公園が一つあるだけである。
とはいえ、町内会としては、何かやらないと示しがつかないので、最近は8月の頭にその公園を利用して、カラオケ大会なんかをやっている。 しかし、その頃は北九州最大の祭とかぶるため、すこぶる人の集まりは悪い。
ぼくが小学生の頃は、盆踊り大会も賑やかだった。 町内のあちらこちらから、盆踊りの歌が流れていた。 踊りに参加すると、アイスクリームをもらえるという特典もあった。 また、盆踊りのある8月13日から15日の3日間だけは、駄菓子屋も夜の9時までは店を開けていた。 いわば、子供たちが公然と夜遊びのできる3日間だったわけだ。 盆踊り大会で一番よかったのは、夜も友だちと遊べることだった。 夜に友だちと会うというのは、昼間会う時とはまた違った感じがしたものだ。
幸いぼくは盆踊りという習慣を通して、日本の伝統や文化を体験して生きてこれたのだが、今この地域に住む子供たちは、それも知らないまま大人になっていくのだろう。 それを考えると、ちょっとかわいそうな気がする。 でも、まあいいか。 彼らのことだから、盆踊り大会があったとしても、相変わらず家にこもってゲームをやっているのだろうから。
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