『影枕』
何をしても情けない日々と うだる夏の暑さで 狂ったような体が 汗をしぼり出す。 昼寝をするにしても 涼む所はなく たまに吹き来る風に任せて 寝息も荒く
加減のきかぬ影枕 あっちに行ったり こっちに来たり ふう、まだ始まったばかり
毎日毎日体温にも似た 温度計(はかり)を見ては 芋の子洗いの海もいや 登るに疲れる山もいや せめては風呂へと思っても つかるだけではやり切れぬ 暑い暑い いや 面倒だ面倒だ
加減のきかぬ影枕 あっちに行ったり こっちに来たり ふう、まだ始まったばかり 始まったばかり
19歳の頃に書いた詩である。 まだエアコンが一般的ではなかった時代の、ぼくの夏の一コマである。 あの頃は、とにかく寝ることで暑さを忘れるようにしていた。 とは言え、ぼくはそう夏が嫌いではないほうなので、この時とばかり日光浴をしていたこともある。 とにかく、夏は黒く焼かないと何か損をしたような気がしていたからだ。
さて、話を現在に戻すが、とにかく暑い! どうにかしてくれ、といった暑さである。 生まれてこの方、こんなに暑かったことがあっただろうか。 とにかく陽に当たると痛い。 サウナよりも暑い。 沖縄でもこんな経験はなかった。 幸いにも、ぼくは店の中で仕事をしているので、普段はあまり暑さとは縁がない。 しかし、倉庫に商品を取りに行ったり、タバコを吸いに行ったりした時に、この暑さを嫌と言うほど体験させられる。 いつも涼しい場所にいるので、突然暑い場所に行くと、体が対応しきれないのだろう。 生まれてこの方最高の暑さと思うのは、いかに今年はエアコンに依存しているのかというのがよくわかる。 実際、車のエアコンは最低の温度に設定しているし、家でも食事の時だけはエアコンを入れるようになった。 この辺も昨年とは大きな違いがある。 まあ、せめての救いは、寝る時にエアコンを入れてないことくらいだ。 これで、エアコンを入れて寝ていたとしたら、この夏いつか倒れてしまうだろう。 いつもエアコンの中で暮らしている人間が熱中症で倒れたとしたら、世間の物笑いになるのは必至である。
「心頭滅却すれば、火もまた涼し」という言葉があるが、あの言葉は嘘である。 なぜなら、心頭を滅却すれば、涼しいという気持ちも起きないはずだからである。 あの言葉を真に受けて、「涼しい」という気持ちを探したことがあるが、結局その「涼しさ」を探しているうちに暑くなってしまった。 まあ、夏は暑いものと割り切ってしまえば、気は楽なのだろうけど、この暑さじゃねえ。 とにかく、この史上最高の暑さは、まだまだ続くだろう。
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