2002年08月07日(水) |
広告塔とホーロー看板 |
最近見なくなったものの一つに、田んぼの中の広告塔(正しくは何と言うのか知らない)がある。 今でこそJR鹿児島線の折尾・博多間は住宅街の中を走っているが、つい20数年前までは、その住宅街となっている所は一面田んぼであった。 汽車に乗って博多に遊びに行く時、列車の窓から見える各場面に必ず一つは広告塔があった。 ぼくが覚えているのは、「おたふくわた」「カクイわた」「小野田セメント」「ナショナルテレビ」「日立テレビ」などである。 その中でも特に印象に残っているのは、「日立テレビ」である。 「日立のテレビ」と書かれた文字の上で、なんとテレビが笑っているのだ。 ほのぼのとした田園風景の中、あれほどマッチした広告塔はなかった。 先ほども言ったとおり、今は住宅街になっているので、もしそういう広告塔が残っていたとしても、電車の中からは見ることが出来ない。
10年ほど前に新幹線で東京に行った時、岐阜の長良川辺りで、「727」と書かれた看板を見つけた。 その看板は延々と続いている。 「あれは何を意味しているのか」と同行した友人が必死に考えていた。 「こんなところで、飛行機の宣伝はせんやろうし・・・」 と言いながら、ぼくも気になっていた。 後でわかったが、それは化粧品の広告看板だったようだ。 しかし、ただ「727」だけでは何のことかわからない。 先の日立のテレビのように、その周りの風景に溶け込んでいるわけでもないし、これではある種牧歌的な旅情というものも薄れてしまう。
田舎に行くと、よく大村昆の「オロナミンC」や水原宏の「キンチョール」、由美かおるの「アース」などの看板をかけた家を見かけたものだった。 ぼくは知らなかったが、この看板のことを「ホーロー看板」というらしい。 マニアの間ではかなりの高値で売買されているようだ。 昔は小学校の通学路にも、この手の看板があった。 しかし、こういう看板がかかっているのは、決まって土壁で、今にも潰れそうな家が多かった。 実際その家に、人が住んでいるのかどうかも怪しかった。
最近家の近くでは、こういう看板も見かけなくなった。 しかし、遠方にドライブをした時などは、時々見かけることがある。 以前、熊本の黒川温泉に行った時、ある薬屋さんの中で、このホーロー看板を見つけた。 おそらく、そこの店主はマニアなのだろう。 かなり古いものもあったようだ。 島根県の津和野に行くと、「一等丸」と書かれた看板を見かけた。 一等丸とは腹痛の薬で、この地域では有名らしい。 というので、ぼくも一袋買った覚えがあるが、それを飲んだことがないので、効き目のほうはわからない。 また、山口県の萩には「ちょんまげビール」という看板がしつこくかかっている。 もちろん地ビールで、ぼくは一度飲んで見たいと思っているのだが、これも飲んだことはない。 他にも、鹿児島に行った時に、「ぼんたん飴」や「兵六餅」という看板を見たことがある。 ホーロー看板、いまだ健在ということだろうか。
しかし、寂しく思うのは、これらの看板は、地元の特産物や土産品でしか使われてないということだ。 例えば、「トヨタの車」とか「ソニーのVAIO」などと書かれた、ホーロー看板や田んぼの広告塔を見てみたいものである。
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