頑張る40代!plus

2002年08月06日(火) 化かされた話

よく狸や狐に化かされた話を聞く。
以前ここでも、そういう話を書いたことがある。
ある女性が山に行った時に女の子と出会い、その女の子と2時間ほど遊んでから山を降りてみると、大騒ぎになっていた。
その女性は2時間と思っていたが、実際は2日ほど経っていたのだ。
そのため、地域の人が大捜索を繰り広げていたらしい。
当の本人は藪などで引っかいた傷はあったものの、いたって元気だったということだ。

いつもと同じ道を歩いているのに、全然知らない場所に出た、とか、いくら歩いても、同じ場所に出る、とかいう話はよく聞く話である。
ちびまる子にもそういう話が載っていた。

こういう話は、田舎での話だと思われるだろうが、そうではない。
実際、繁華街でも起きているのだ。
かく言うぼくが、その体験をした。

何度もここで書いているので、ご存知の方も多いと思うが、ぼくの住んでいる地域の中心は黒崎というところである。
JR黒崎駅の乗降客は、博多、小倉に次いで多い。
JR福北ゆたか線の一方の基点で、私鉄や路線バスの基点でもある。
そごうや長崎屋の倒産などがあって、昔ほどの活気はないが、今でも多くの人が集まる場所に変わりはない。
そういう場所で起こった話。

ぼくの家は、その黒崎からバスで10分もかからない場所にある。
帰りは「小島方面」と書かれたバスに乗るのだが、黒崎からは同じ「小」のつく「小嶺」行きというバスがある。
「小島」は黒崎を挟んで北側、「小嶺」は南側に位置している。
高校の頃だったが、一度この「小島」と「小嶺」を間違えたことがある。
これは単なるぼくの勘違いだった。
それからは、バスに関してはわりと用心深くなり、ちゃんと路線番号と行き先を確認して乗るようになった。

その後、20歳の頃のことである。
いつものように、路線番号と行き先を確認してからバスに乗りこんだ。
しかし、なんとなくおかしい。
普段は3号線に出てから右車線を走るはずなのに、そのバスは左車線を走っている。
「右に入りそこなったんだろう」と軽い気持ちで考えていると、筒井という交差点で左に曲がってしまった。
ぼくの家に帰るには、その交差点から右に入らなければならないのだ。
「乗り違えたかのう」と思いながらも、すぐに降りるのは恥ずかしいから、2つ先のバス停で降りた。

さて、その数日後のことである。
友人と黒崎で会った帰りの話。
その友人もバスに乗って帰るのだが、ぼくの乗るバス停のある車線と逆の車線にバス停があった。
ぼくは時間を待たなければならなかったので、しばらく友人に付き合うことにした。
しかし、友人の待っているバスはいつまで経っても来ない。
ぼくの乗るバスのほうが先に来てしまった。
バスには、はっきり「小島方面」と書いてある。
それを確認して、ぼくは走ってバス停に向かった。
寸前のところで間に合った。
ところが、そのバスも数日前と同じようなルートを通っている。
「あちゃー」と思って、行き先をよく見ると、「小嶺」と書いている。
その日も恥ずかしいので、2つ先のバス停で降りた。
そのバス停から黒崎まで歩いて戻っていると、一台のバスがぼくの横を通り過ぎて行った。
そのバスには友人が乗っていた。
彼はこちらを見ていた。
家に帰ってから彼に電話すると、彼は「どうして小嶺行きに乗ったんね」と言った。
「おかしいっちゃねぇ。ちゃんと小島行きと書いとったのに」
「いや、小嶺行きやったよ。どうしてしんたが走ってバスに向かったのか、不思議に思ったんやけど」
だいたいつい数日前に同じ間違いを犯したのだから、こちらもかなり注意深くなっている。
慌てたとはいえ、ちゃんとぼくは「小島方面」と書いているのを確認したのだ。
普通ぼくは、この手の話は笑い話にするのだが、この話だけはミステリーにしてしまう。
なぜなら、ぼくは自分の目を信じているからだ。

そういえば、その日は満月だった。
いやに月が明るかったのを覚えている。


 < 過去  INDEX  未来 >


しろげしんた [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加