「南の旅」
見下ろせば はるかな海が見える 南の国に ぼくはやってきた 風に乗って 降りてみようか もっと空を 飛んでいようか
この街は パイナップル通り 見れば街は 人だかり うん、一つ買ってみようかな だけどそれほど お金もないしね
汗が流れて ひと泳ぎ やけどの海で こうら干し
次から次へと 続く波に 人、人、人が 乗ってくる 初めて見下ろす 南の国が ぼくにはとても 懐かしくて
息をつく暇もなく 飛び回ったよ 旅の終わりには 汽車に乗ってね
以前この日記に、友人たちと宮崎に旅行に行ったことを書いたが、20歳の頃に、その時のことを思い出して書いた詩である。 この旅行で特に印象深かったのは、この詩にあるように、パイナップルだった。 それまでパイナップルは、パイ缶でしか食べたことがなかった。 生で食べたのは、おそらくこれが最初だろう。 そのパイナップルだが、輪切りにはしてなかった。 芯を抜いたものをたて切りにして、割り箸に刺して売っていた。 価格は100円くらいだったと思う。 味のほうはシロップにつけているわけでもなかったので、それほど甘くは感じなかった。 すっぱいというのが第一印象だった。 さらにえぐい。 これを食べて、パイ缶というのは砂糖菓子だと初めて気づいたのだ。 しかし、このすっぱさとえぐさで、充分にのどの渇きが癒えたのを覚えている。
小学生の頃の話だが、駄菓子屋に「パインアイス」というパイナップルを輪切りにした形の氷菓子が売っていた。 価格は5円で、お粗末なビニール袋に入っていた。 けっこう人気商品だったので、みんなが一度は手にとっているらしく、ビニール袋はいつも手垢で真っ黒だった。 ぼくはこれが好きで、夏になると毎日食べていた。 しかし、6年生の頃、人工甘味料問題が沸騰し、「パインアイス」は駄菓子屋から消えていった。 それから30年近く「パインアイス」にお目にかかってなかったのだが、ある日セブンイレブンで売っているのを見つけた。 懐かしさのあまり、思わずこれを手に取り、さっそく購入した。 しかし、食べてみてがっかりした。 ぼくが小学生の頃食べていたものに比べると、甘さが違う。 それが入っていた袋を確かめてみると、そこには「砂糖」と書いてあった。 ぼくが覚えている甘さというのは、問題になった人工甘味料「チクロ」の甘さである。 上品な砂糖の甘さではない。 何か寂しい思いがした。 当然その後は、「パインアイス」を一切口にしていない。
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