どうも、胸に引っかかるものがある。 一昨日書いた、ストリップ小屋に勇んで行った後輩のことである。 彼について、これだけは書くまいと思っていたことがある。 しかし、このまま流してしまうと胸のつかえが取れない。 ということで、やはり書いておくことにする。
沖縄に行った時、その後輩は、まだ20歳を過ぎたばかりの小僧だった。 彼が沖縄に行ってまでストリップ小屋に固持したのには、理由がある。 それは、彼がまだ童貞だったということだ。 彼は背が低く、幼い顔をしていた。 一般的にこういうタイプは、年上の女性に可愛がられると思うのだが、彼の場合は縁がなかったのだろう。 彼は口を開くと、いつも「女、女」と言っていた。 そんな女性への憧れから、彼はストリップ小屋に行きたかったのだと思う。
その当時から、彼は地元のストリップ小屋に入り浸りだったと聞く。 別にそんな所に行って発散しなくてもよさそうなものなのに、と思ったのだが、彼なりの考えがあったのだろう。
しかし、寂しい男である。 彼は高校を卒業して、すぐにうちの会社(当時の)に入社した。 普通は同僚や先輩女性に目が行くのだが、彼は違った。 彼の目はいつも外に向いていたのだ。 彼は最初から、飲み屋のホステス、ストリップのダンサーといった、いわゆる玄人が好きだった。 当然、金を持ってない彼は相手にされなかった。 しかし、彼はくじけなかった。 何度も何度も、そういう場所に足を運んだのだった。 会社には独身の女子社員が多数いたのに、なぜ彼はそちらのほうに目を向けなかったのだろうか? もしかしたら、自分は女性にもてないと思っていたのかもしれないが、それでも最初から諦めるのではなく、少しは努力も必要だったのではないのだろうか? とにかく、かなり長い間、彼には彼女がいなかった。
そういう彼にも、ついに春がやってきた。 ぼくが会社を辞める少し前の話である。 「あいつ、とうとう女が出来たらしいぞ」、という噂が社内を駆け巡った。 ぼくはさっそく、彼のいる部門の人間に真偽を確かめたが、彼女が出来たのはどうやら事実らしかった。 「相手はかなりきれいらしいよ」 「へー、あいつもやるねえ。でも、よかったやん。長いこと待った甲斐があったねえ」 「でもねえ、相手は日本人やないんよ」 「えっ!?」 相手はフィリピーナだった。 彼は彼女に、かなり入れ込んでいたようだ。 おそらく貢いだりもしていたのだろう。 ま、しかし、彼女には違いない。 その時は素直に喜ぶことにした。
ところが後日、意外な事実が発覚したのだ。 本来なら、それは笑うべきことである。 しかし、それを聞いたときは、ぼくは笑いを通り超えて、彼に哀れみを感じた。 その事実とは、 彼が本気に好きになり、彼が真剣に入れ込んできた、きれいなフィリピーナ、というのは、実は女性ではなかった、ということである。 彼女はニューハーフだったのだ。 そのことを知った後輩は、かなり悩んでいたらしい。 彼女(?)も本気だったらしい。 しかし、結局はわかれたという。
その後の彼を、ぼくは知らない。 もう30歳は越えていると思うが、果たして無事に童貞は捨てられたのだろうか?
よし書いたぞ。 これで、すっとした。
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