頑張る40代!plus

2002年03月27日(水) 棚卸

今日は棚卸だった。
年に2度行われるのだが、その時期になるといつも苦痛を感じる。
販売業界に入って20年以上経つが、棚卸という作業はいまだに慣れない、嫌なものである。
「こんな嫌な棚卸なんかなくなればいいのに」と、いつも思うのだが、そうもいかない。
そこで「せめて、嫌な棚卸の中にも楽しみを見つけよう」と、いつも思うことにしている。

棚卸で真っ先に思い出すのは、長崎屋にいた時のことである。
その日は店を閉じての棚卸であった。
前日、ぼくたちはいつものように飲みに行っていた。
3軒ほどハシゴして、気がついたらもう午前5時を過ぎていた。
その時のメンバーの一人に、例の「海綿体パパ」=Kさんがいた。
ぼくが時計を見て気がつき、「あ、Kさんもう5時過ぎですよ。9時半からやけど大丈夫ですか?」と言うと、Kさんは例のごとく泥酔していて、「あ、しんちゃん、ぼくはねえ、フニャフニャフニャ・・・」とわけのわからんことを言っていた。
とにかく帰って寝ようということになり、そこでお開きになった。
タクシーで家に戻り、3時間ほど寝てから会社に出かけた。

朝礼が始まったが、まだKさんは来てない。
フロアー長が「Kさんどうしたの?」と聞いたので、ぼくは「昨日飲みに行ったんですけど、もしかしたら寝坊してるのかもしれません」と言った。
みんなはクスクスと笑った。
すると、突然フロアー長が「こんな大事な日に、飲みに行ったなどと言うな!不謹慎な」と怒り出した。
その怒りの最中にKさんはやって来た。
まだ眠っている。
フラフラしながら朝礼の列に加わり、ぼくの横に立った。
ぼくが小声で「Kさん大丈夫ですか」と聞くと、Kさんは口元だけに笑みを浮かべ、「お、しんちゃん。大丈夫、大丈夫」と言った。
しかし、大丈夫じゃない。
目を閉じている。
そして体が揺れている。
フロアー長は、苦虫を噛みつぶしたような顔でこちらを見ている。

フロアー長が棚卸の説明を始めた。
相変わらずKさんは目を閉じたままである。
時折倒れそうになる。
それを見てフロアー長が、「Kさん、起きてますか?」と言った。
Kさんが目を閉じたまま何も言わないので、ぼくがひじでつつくとKさんは目を開けた。
そして周りを見回し、「ん?・・・ああ、大丈夫です」と答えた。
それから、また目を閉じる。
フロアー長が「今までの説明、わかりましたか?」と訊くと、また目を開け「ん?・・・ああ、大丈夫です」と言う。
他の人はこのやり取りを見て笑っていたが、ぼくは笑おうに笑えなかった。

その後、棚卸が始まった。
Kさんは、まだフラフラしていた。
Kさんのパートナーは、「Kさん、ぼく一人でやりますから、寝とって下さい」と言っていた。
Kさんは例の調子で、また「ん?・・・。ああ、大丈夫」とやっている。
結局、そのままKさんは棚卸を続けた。

その期の棚卸は、かなりの違算を出してしまった。
結局、後日再棚卸ということになった。
しかしそれは他に原因があったからで、決してKさんのせいではなかった。


さて、今日のことである。
ぼくはいつものように、棚卸の中に楽しみを探していた。
売場をチェックしていると、ふと体重計を見つけた。
「そういえば、ここのところ体重を量ってなかったな」と思い、ちょっとこれに乗ってみることにした。
「何か日記のネタになるんじゃないか?」と期待して目盛りを見ると、たしかに日記ネタにできることになっていた。
昨年74キロだった体重が80キロを超えていた。
服を着ていたとはいえ、80キロを超えるのは生まれて初めてのことである。
「やったー、これはネタになる!」と思った。
が、喜ぶことではない。
元の体重に戻すには、大変な努力が必要である。
今日ぼくは、棚卸の中にひとつの苦しみを見つけた。


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