頑張る40代!plus

2002年02月28日(木) 今日の出来事

今日の午前中、一本の電話が入った。
「もしもし、Iですけど」
知り合いのI刑事からだった。
「署の洗濯機が壊れたっちゃねえ。引き取りしたやつでいいんやけど、使えるやつないかねえ?」
「さあ?確かめてないけ、使えるかどうかはわかりませんけど」
「まあいいや。うちの者行かせるけ、よろしくね」

今日は商品が大量に入荷する日で、朝から大忙しだった。
気がつけば、商品の検品や荷出しをしているうちに午後になっていた。
仕事が一段落し、ちょっと一息入れていると、「しんたさーん、お客さまでーす」と呼び出しがかかった。
行ってみると、体格のがっしりした坊主頭の男性がいた。
「しんたさんですか?」
「はあ」
「Iさんの紹介で来ました」
「ああ、聞いてます」
そしてぼくは、坊主刑事と一緒に大型ゴミを捨ててある場所に行った。
そこにはもう一人の刑事さんがいた。
顔は若いが、眼つきの厳しい人であった。
ぼくの顔を見るなり、眼つき刑事は「あ、お世話になりまーす」と挨拶をした。
「こちらこそお世話になりまーす」と、ぼくは返した。
そして、使えそうな洗濯機を探した。
大型のゴミ捨て場は、外部からの投棄を防ぐために、金網で囲ってある。
畳にして四畳半のスペース。
その狭い金網の中を、大柄の男が三人でゴソゴソやっている図というのは、異様なものがあっただろう。

この異様な風景を、遠くから眺めている人がいた。
よく見ると、うちの部門の取引先の人であった。
ぼくが気がつくと、その人はこちらに近づいてきた。
「こんにちは。しんたさん何やってるんですか?」
「実は・・・。あ、ここでは何やけ、ちょっとこっちに来て」と、他の場所に移動した。
「どうしたんですか?」
ぼくは声を潜めて「あの人たち刑事なんですよ」と言った。
「え!!何かあったんですか?」
「ちょっと前に殺人事件があったでしょ」
「え?そんなことありましたかねえ」
「あったやないですか」
「あ、ああ」
「それでその殺人現場になったのが、うちが洗濯機を配達した所だったんですよ」
「え、そうなんですか!!」
「その犯人がまだ捕まってないんですよ。それで、何か手がかりはないかと、事件の前にうちで引き取った洗濯機を調べてるんです」

ぼくたちがヒソヒソ話をしていると、坊主刑事が「しんたさーん、これ持って行きます」と言った。
「ああ、それですか。どうぞ持って行って下さい。お役に立ててよかったです。ご苦労様です」
ぼくは隣にいた取引先氏に「どうやらあれやったみたいですね」と言った。
「そうみたいですね」
「そういえば、あの洗濯機には髪の毛がついとったなあ・・・」
「・・・」
取引先氏は無口になってしまった。
かなり信じ込んでいる様子で、顔が引きつっているようにも見えた。
それを見て、ぼくは何か申し訳ないような気分になり、「冗談ですよ。冗談」と言い、いきさつを説明した。
取引先氏はやっと笑顔を取り戻したようだった。
きっと真面目な人なんだろう。
悪いことしたなあ。


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