| 2002年02月24日(日) |
うちの店の駐車場は、ゴミ捨て場ではない! |
店で困った問題が起きている。 ぼくの働いている店は、2Fが駐車場になっているのだが、最近そこがゴミ捨て場になっているのだ。 昨日の朝、ぼくがいつものように2Fの駐車場の鍵を開けに行ったところ、市の指定のゴミ袋に入ったゴミが捨ててあった。 もはやカラスに荒らされた後なのか、ゴミはいたるところに散らばっていた。 清掃のおばちゃんがさっそく駆けつけ、「何もこんな所に捨てんでも、よさそうなものなのに。ちゃんと指定日に出せ」などと、ブツブツ言いながら片付けていた。 これまでも、タバコの吸殻を大量に捨てていたり、コンビニやホカ弁の袋にゴミを包んで捨てていた例はあるが、今回のような本格的なゴミは初めてのことだった。
さて、今日の話である。 午前中わりと暇だったので、テレビでオリンピックを観戦していた。 そこに隣の売り場のTさん(女性)がやってきた。 「しんたさん、手が空いてたら、ちょっと来て欲しいんやけど」 何だろうと聞いてみると、「お客さんが、2Fの駐車場に不審な箱が置いてあると言ってきたんよ。行って欲しいんやけど」と言う。 ぼくはそれを聞いて、すぐさま頭の中で「不審な箱」を検索してみた。 検索結果は「爆発物」であった。 おそらく最近「不審な箱」と聞いて、「爆発物」を連想しない人はいないんじゃないだろうか? ちょうど通報したお客さんも一緒にいたので、詳しい話を聞いてみた。 「何かゴソゴソ動いているんです」と言う。 そこでまたぼくは、頭の中で「不審な箱 ゴソゴソ動く」を検索してみた。 「動物」という結果が出た。 さらに検索していくと、「子犬、猫、ネズミ、ヘビ、イグアナ・・・」という結果が出た。 「さて何だろう?」ということで、現場に向かった。
現場に着いてみると、そこには一升ビンが6本ほど入る月桂冠の段ボール箱が置かれていた。 封は開いていたが、ビニールのひもでくくってあった。 中身が何か確認しなければならない。 そう思ったとたん、心臓が高鳴りだした。 考えてみれば、こういう役回りはいつもぼくにやってくる。 人が倒れていた時も、酔っ払いが暴れていた時も、いつも汚れ役だ。 「損な運命を背負っとる」と思いながら、ひもをずらして箱のふたに手をかけた。 心臓は相変わらず高鳴っている。 「待てよ」 ぼくはふたから手を離し、顔を箱に近づけ、犬や猫を呼ぶ時のように、舌を鳴らしてみた。 「チ、チ、チ」 「・・・」 「チ、チ、チ」 「・・・」 反応はない。 「しかたない。開けるか」 もう一度、ふたに手をかけた。 「いや、待てよ」 また手を離し、今度は箱を軽く蹴ってみた。 「・・・」 もう一度蹴った。 「・・・」 反応がない。 「しかたない。開けるか」 再度、ぼくは箱のふたに手をかけ、「損な役回りやのう。もうどうにでもなれ!」と思いながら、片方のふたを開けた。 「!?」 中には、何かビールケース、いや牛乳ケースのようなものが入っていた。 中を覗いてみたが、暗くてよくわからない。 におってみると、やはり何か生き物が入っているのだろう。 糞のような臭いがした。 ケースの前にたたずんでいたが、どうしてもその牛乳ケースのようなものに触る気がしない。 触れたとたんに「バーン」となるかもしれない。 ヘビが出てきて、手を噛み付くかもしれない。 いろんな思いが、ぼくにケースを触らせようとしない。 このままそこにいても埒が明かないから、ぼくは箱を閉じ、それを1Fの事務所前の商品搬入口まで持って行くことにした。 抱えてみるとそれほど重いものではなかったが、いつ「バーン」と鳴るかと思うと、あまりいい気持ちはしなかった。
搬入口に着くと、ちょうどそこには店長代理がいた。 「しめた」と思い、「この箱が2Fの駐車場に放置してあったんですけど」とぼくは言った。 「何それ?」 「さあ?中に牛乳のケースのようなものが入ってるんですけど。それに何か生臭い」 「そこに放っとき」 「そういうわけもいかんでしょう」 「じゃあ、開けてみようか」 ということで、二人で開けてみることにした。 ひもをカッターで切り、ふたを全開した。 しかし、やはり中が暗くてよく見えない。 代理が懐中電灯を持ってきて、箱の中を照らしてみた。 「あっ!」 愛くるしい目がこちらを見ている。 黄土色の小動物、イタチである。 ぼくはイタチが街中を駆けていくのを何度か見たことがあるが、こうやってじっくり顔を拝むのは初めてのことだった。 牛乳ケースのようなものは、罠であった。 足を挟まれて動けなくなっているようだ。 よく見ると、足が一本取れ、血が流れている。
代理とぼくは顔を見合わせて、「どうしようか」と言った。 「死んどったら、生ゴミとして出すことも出来るけど、生きとるしねえ」 「離したら、一発かまされるやろうし。警察に届けましょうか?」 「いや、イタチぐらいで警察は来んやろう」 「でも、不法投棄ということで、一応知らせとったほうがいいんやないですかねえ」 「あ、そういえば、ネズミ駆除とかする所を知っとるけ、聞いてみよう」 代理はさっそく電話をかけた。
「今日の夜、引取りに来てくれるらしいよ。黒い袋で包んどってくれと言うことやった」 そこで店にあった黒い袋で包んだ。 「このままじゃ、不審がられるけ、一筆書いときましょう」とぼくは言い、“中には、罠にかかったイタチが入っています”と白い紙に赤字で書き、その箱に貼っておいた。
夜になって、業者がイタチを引き取りに来た。 「しかるべき場所に捨ててくる」ということだった。 これで、一応この事件は解決したわけである。 が、問題はまだ残っている。 だいたいどこのどいつが、この箱を放置していったんだろう? 自分で捕まえたのなら、自分で始末しろ! そういう処理の仕方も知らない、スーパーの駐車場に放置して何が面白いんだろうか。 生ゴミでもうんざりしているのに、もういいかげんにしてもらいたいものである。 常識をわきまえろ!!
さて閉店後、今日用があって休んでいた店長からぼくの携帯に電話があった。 店「終わった?」 し「今から閉めます」 店「今○○店におるけ、そこに売り上げ流すように代理に言うとって」 し「わかりました。そう言えばいいんですね。ところで、今日大騒動があったんです」 店「え?」 し「不審な箱が2Fの駐車場に放置してあって・・・」 店「何が入とったん?」 し「それが大変なものやったんです」 店「警察呼んだ?」 し「いえ、呼んでませんけど」 店「何やったんね?」 し「今日は言えません。明日言います」 と、ぼくは電話を切った。
店長は気になって、今頃眠れないでいるだろう。
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