みゆきの日記
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久しぶりにトモユキと二人で食事に出かけた。 菜子はベビーシッターのおばさんとお留守番。 ちょっと雰囲気のいいところへは菜子を連れて行けないから、 このおばさんには、ちょこちょこお願いしている。 菜子の扱いにも慣れていて安心して出かけることができた。
出かける前にお乳を飲ませて、菜子が眠ってしまったすきに家を出た。 ホテルの中のレストランだから、二人ともちょっとドレスアップしている。 お洒落して出かけられるのが嬉しかったので、 久しぶりに香水をちょっとたらして普段あまりつけない婚約指輪をつけた。
「みゆちゃん、今日可愛いね。 やっぱり君お化粧すると別人だよ・・。」
「別人は言いすぎでしょ。 あんまり変わらないねって言われるのに・・。」
「いや、別人だよ。僕だまされたよ・・。 ほんとにあの時はビックリしたもん。」
トモユキが言っているのは、初めて私の素顔を見た時のことで、 その頃私たちはまだつきあっていなかった。
私たちは東京で働いている頃、わりと近くに住んでいたのだけれど、 週末、一人で家にいる時にトモユキが今近くにいるんだよって 電話してきたことがあったのだ。
「え、どこにいるの?」
「うーんとね、XXXの交差点。」
「それじゃ、そこ左に曲がって最初の信号のところで止まってみて。 私、窓から手振るから。」
窓の下を見下ろすと、車を降りて手を振るトモユキが見えた。 電話で話しながら、私はなんとなく部屋に呼ばないと悪いような気がして、
「ちょっとあがっていく?」
と聞いたのだった。
「え、いいの?」
トモユキは驚いたような様子だったので、私は呼ばなくてもよかったんだ、と 後悔した。 そのとき私は顔も髪も洗いっぱなしで部屋着を着て試験勉強をしていたのだった。
「と、とりあえず着替えるからちょっとだけ待ってて。」
着替えて髪を急いでとかしつけたけれど、お化粧をする余裕はなかった。 トモユキはなんだか落ち着かない様子で、コーヒーを2杯飲むとそそくさと帰っていった。 後で聞いたら、このときトモユキはすごくびっくりしたんだそうだ。
「つきあってもいない女の子のスッピン見たの初めてだったもん。 それに、部屋に平気で上げるなんて、みゆちゃん危機感なさすぎだよ。 俺、エッチしなきゃいけないのかな・・って考えちゃったよ。」
「えええ。信じらんない。そんなこと考えてたの??」
「そりゃ、考えるよ。 しなきゃ悪いのかなって思ったけど、俺もうみゆちゃんのこと好きになってたから、 そんな風にしたくなかったし。」
「しなきゃ悪いって・・エラそうに。 そんなわけないじゃない。」
「みゆちゃんはずっと外国にいたから、田舎モンだから知らないんだよ。 ずっと東京にいたらそういう感覚になるんだって。 あのまま東京にいたら危なかったよ。よかったね、僕みたいないい男に拾ってもらって。」
「ふぅん・・」
結局私が東京にいたのは1年半にも満たない短い期間だったので、 こういう風にいわれるとそうなのかな、と思ってしまう。 アナタはまだ若いからじゃないのっていう気もするけど。 (トモユキは私よりふたつ年下なのだ。)
久しぶりに食べたモートンズのステーキは美味しかった。 ここのたまねぎのはいったパンが私は大好きで、ひとつ包んでもらう。 お肉は全部は食べられなかったけど、中がトロリとしたチョコレートケーキは絶品で、 綺麗に平らげてしまった。
家に帰ると菜子はまだ眠っていた。 一度も起きなかったと言う。 おばさんも暇だったのか、掃除をしてくれていた。 ちょっと眠りすぎで夜寝ないんじゃないかと心配したけれど、 菜子は起きてミルクを飲むとまた眠った。
トモユキと二人で美味しかったねーって言いながら 抱きあって眠った。
素敵な夜だった。
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