行人徒然

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選挙制度とかさ
2001年05月15日(火)

 かつて某国の松笠将軍がある国に統治のためにやって来て言った。

 この国の知的レベルはお世辞にも高いとは言えない。政治に関する一般的知識も少ないし、関心も低い。こんな状態の民に直接選挙で己の国の代表を決めさせたら、勢いなどで愚昧な代表が立ち、国を憂わなければいけないような事態がおきるかもしれない。
 一般民衆の知的レベルと政治的関心が高まるまで、この国の代表は間接選挙で行うのがいいだろう。

 松笠将軍がそう言ってから半世紀が経った。かつて将軍が統治していた国の一般民衆は、将軍が生きていたら驚くほどの高い水準を得るようになった。あまりにも高すぎるがゆえに、将軍が統治していたころの水準まで落とそうという運動まで起こり、それが実現しかけているほどだ。
 しかし、松笠将軍が願っていた「一般民衆の政治的意識」はまったく改善されることがなく、関心は相変わらず低いまま。投票に行く人々は年々減りつづけ、なぜ世の中が変わらないのかを知ろうとしないまま、ただ文句だけを言いつづけた。そして、義務さえ果たさないくせに権利だけを主張し、それを黙認した結果横暴な行為を繰り返す人が目立ち始めた。
 松笠将軍のゆかりの人が、その国を訪れて言った。

 かつて、祖父である松笠将軍がこの地を訪れた時、まだ何も知らないながらもひたすらに知識を得ようとする人々に心を打たれた。だがそれ以上に、人を尊ぶ姿勢、古い風習を大切にする態度(良きにしろ悪しきにしろ)、自然を愛する生活に胸が痛くなったと言う。
 しかし、今この地を訪れて、祖父が胸を打たれたというすべての事柄を見つけることができない。

 松笠将軍ゆかりの人は、そう言って涙したそうだ。それを聞いたある人は恥ずかしくて穴に入りたいと思ったそうだが、別の人はつまらぬ感傷と鼻先で笑ったそうだ。



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