行人徒然

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ナッシュはなぜシャドルーを追いかけているのか。
2000年09月18日(月)

 今日は派遣先企業への顔合わせです。何とか好印象をいただけたようで、来週の頭から出勤となりました。これもひとえに皆さんのおかげですね。ありがとうございました。

 ところで、ナッシュって、何でシャドルーを追いかけるようになったんだろう。普通に生活している分には、軍内部に麻薬が流れているのに気付いても、知らぬ振りを決め込んで自分に火の粉がかからないように振舞うもんじゃないんだろうか。それをしなかったということは、よっぽどの理由があるのか、よっぽどの馬鹿可のどちらかだろう。
 強い正義感ぐらいで、わざわざ左遷されるほど上司にたてつく(ZERO3)ほどの馬鹿とも思えない。どうも設定上はインテリっぽいから、かなりの理由があったのだろうと推測される。
 そこで、この前名倉くんと電話しながら(またか)考えたナッシュさんのいきさつ。

 飛行機好きで正義感の強い少年だったナッシュ(M.D.F.的設定参照)。世界の平和を守るため・・・ではなく(それもあったけど)年取った女王陛下のために戦うのが嫌で米国空軍へ。(英国空軍は女王直属)
 学力の高さと高い格闘の力に加えて持ち前の高いプライド。若干の戦闘経験も、彼の昇進を助けるステップになる。
 親友と呼べる男とも出会い、まぁ、ちょっとしたはずみでヤツのほうが上司になってしまったが、すぐに追い越してやるつもりでした。
 ある日、彼は医務室から呼ばれる。先日の健康診断のときに、ちょっとした問題が見つかったというのがその理由だ。わざわざ呼び出されるくらいなのだから、ちょっとどころではなくて結構な問題なのだろう。そう考えて医務室の扉を開けた彼の前には、やはり数人の呼び出された人々。
 なんでも鬱病になりかかっているという。朝起きるのがつらくないか。タバコの本数や飲酒の量が増えてないか。男女関係で問題があったんじゃないか。夜の寝つきが悪いんじゃないか。そんな類の質問が書かれたアンケートに記入した後、彼は処方箋をもらい、軍内の薬局で薬を処方してもらった。
 自分がうつ病だとは思わなかったが、最近少し酒の量が増えたのは確かだ。神経がやられたとすれば、最近新しくできた彼女にぞっこんということが原因だろう。何しろ、週に一回は彼女と徹夜をするのだから。本当は週に一回じゃ物足りないが、休みがないのだから仕方ない。うつ病の「躁」部分を維持しているのだろう。あまり問題があるとも思えないが、集中力が欠けてしまうのはいただけない。
 処方された薬は、苦味もにおいも何もない粉末状の薬。毎日食後に飲めという。なくなる前に、簡単な検査を受けて薬を継続するかを聞くように言われた。
 精神系は専門分野ではない。多少の医学知識のあるナッシュだが、それについて何も不信を覚えなかった。
 不思議なことに、薬を飲むと気分が昂揚する。そのくせ、神経は落ち着いて研ぎ澄まされたような感じだ。軍事演習があるときなど、己の実力以上の成果が出せて、なるほど、自分は病気だったのか。薬というものはよく効くものだ。などと感心していた。
 薬は一週間おきにもらうようになっていた。服用しつづけて約一ヶ月。ナッシュは食後に薬を飲まないとなんだか落ち着かないような強迫観念にとらわれている自分を発見する。検査のときにそれを報告したが、習慣づいたせいだといわれただけだった。そして、通常どおりの薬を処方してもらう。まだまだ回復の見込みはないらしい。
 そんな時、彼女はナッシュをキャンプに誘う。最近いっしょに「徹夜」するときのナッシュはとても素敵。今度はアウトドアで一緒に夜を過ごしてみたい。そんな風に誘われて、ナッシュはあっさり承諾した。荷造りは完璧だったはずだが、食後に飲んでいた薬の包みはうっかりキッチンに置き忘れたことに気付いたのはキャンプ場で。薬を服用していることや病名は彼女に告げておいたから、もしも不機嫌にさせたらごめんと、キスと一緒に断った。彼女は笑ってかまわないといってくれて、ナッシュはそれだけのことに安堵する。
 キャンプは大勢のほうが楽しいだろう。そう思ってあらかじめ親友殿と休日を合わせて、ヤツの彼女も連れて4人でキャンプ場へ。だが、そこがすべての発端になった。
 夜。ナッシュは異常なまでの不安に刈られる。さっきまで一緒に時間を共有していた彼女。今は隣で寝息を立てている。親友とその連れは、少しはなれたところにテントを張った。二人はその中にいるはずだ。
 不安で仕方がない。誰かが自分を追ってきている、捕まえようとしている。捕らわれてはいけないのだ。
 落ち着け。ナッシュは自分を強くいさめた。おそらくこれは薬を飲み忘れたせいなのだ。落ち着いて事実を見据えれば、こんな不安は消えていくはずだ。きっと自分は「うつ」状態なのだ。だから自分はこんなことを考え、不安を感じるのだ。
 隣に寝ている愛しい女。この女との出会いを思い出せば、心が落ち着くだろう。
 このときナッシュは、自分が彼女を「女」と呼んだことに気付かなかった。それどころか、彼女との出会いから今までを思い出せば思い出すほど、不安がさらに募ってくる。
 どうしてこの女はおれの事をこんなに知っているのだろう。胸の間を冷たいものが滑っていく。もしかして、彼女はスパイだったのだろうか。
 そんな荒唐無稽にも近い想像を、冷静に判断するだけの余裕はすでになかった。そうだ、この女はスパイで、おれは計算ずくで陥れられた!
 ナッシュは女の名をつぶやいた。まだ浅い眠りだったのか、彼女は薄く目を開けて微笑む。どうしたの、ナッシュ?
 その瞬間、どうしようもないほどの破壊衝動が彼を襲った。目の前にあるものは、すべて壊さないと駄目だと思った。すべてに盗聴器。いまの言葉は何かの暗号。この女はスパイだ。
 ナッシュはすばやく身支度をした。こんなときでも冷静に服を着れた自分を誇らしく思った。
 まずは一番怪しいラジオを手に取った。そのままトランクにたたきつける。
 どうしたの、ナッシュ。
 彼女の言葉はそれでおしまい。ナッシュは先のマーシャルアーツ大会でチャンピオンになったその、強くてたくましいとさっきまで彼女が触れていた腕を、容赦なく彼女ののどに叩き落す。鈍く気管がつぶれる音がして、彼女は呼吸を封じられた。
 それだけでは不安で、ナッシュは彼女の顔を何度も殴打した。顔だけじゃない。さっきまでいとおしいと思ったその彼女の体すべてに攻撃を加えた。彼女は全裸だったので、急所は難なくわかった。本当にこの女が死んだのかが不安で仕方なかった。今にも起き上がって、自分の名前を呼びそうで恐ろしかった。
 彼の不穏な動きは、不穏な音となって親友の耳に入った。寝ている彼女を起こさないようにそっと顔を出すと、ナッシュのテントはぐしゃぐしゃに破壊されている!
 思わず飛び出すと、背後から異常な力が襲ってきた。かろうじてかわし、手にしていた懐中電灯を突きつけると、異様な表情の親友・・・のはずだった。
 ナッシュの表情はこの世のものとは思えなかった。目は飛び出して血走り、半開きの口からは舌が出て、よだれをたらしている。
 彼は容赦なくナッシュを殺そうと、そのとき思った。親友は気が違ってしまったのだ。殺さなければ、殺される。
 だが、ナッシュは自分で壊したテントに足を取られ、その結果、彼は親友の手によって気絶させられた。
 彼は警察を呼んだ。彼女には「熊が出た」と伝えた。
 ナッシュはおそらく一生自分の目の前には現れないだろう。そう思った彼の予想に半して、ナッシュは翌日彼の前に現れた。
 熊が出て、おれたちのテントは教われたそうだな。彼女にはかわいそうなことをした。おれだけこんな、無事で・・・
 親友は目を見開いた。彼女はどうやったって熊のなせるような傷を持ってはいなかった。死体をおれはこの目で見たのだ。
 だが、ナッシュは自分のしたことは覚えていると、最後に小さくつぶやいた。彼女の最後の表情も、この脳にしっかり焼き付いている。
 ナッシュは小さく小さくつぶやいて、親友に背をむけた。
 それからナッシュは静養を理由に軍から姿を消した。彼女を失った心の痛手と熊に襲われたときの恐怖がもとで、精神的な疲労が大きすぎ、仕事に支障が出るというのが表向きの理由だった。
 だが、事実は違っていた。ナッシュは残っていた薬と、新しく渡された処方箋を外部調査機関に渡し、それが違う意味での「薬」であることを突き止めていたのだ。彼の休みは静養ではなくて、体の中に残った「薬」を浄化することに目的があったのだ。
 襲ってくるバッドトリップとフラッシュ現象。完全には克服できない、大きな痛手だった。次にいつ現れるかわからない恐怖と引き換えに、彼はさらに強い精神を手に入れた。
 その後独自に調査をはじめたナッシュは、同じような事故がもみ消されていることや、「シャドルー」という名前の組織を知ることになる。直後、彼に薬を処方していた医師が自殺。良心の呵責に耐えられないという遺書を残し、事件は一応解決ということになった。
 だが、ナッシュはそれに満足を覚えなかった。それどころか、さらに上層部が「シャドルー」にかかわっていると確信するまでになった。
 彼は一生を「シャドルー」壊滅にかけることを誓った。彼女のためではない。己の肉体を蝕まれた、己のプライドを傷つけられたから。

 ・・・こんな感じだったかな?
 うまく思い出せないが、気が向いたらちゃんとした話にしよっと。
 今日はこれでおしまい!



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