ひとりがたり
風里



 

(3)
平日は仕事と母の病室に行ったらもう時間はなくなる、だからちびとも会えない。
昼間には家にいられるほど裕福でない私は週末の二日をちびを相手にすごすことが多くなる。

ある金曜の夜、それもかなり遅くに猫の鳴き声がした。
風呂上りの私は塗れた髪をタオルで拭きながらドアを開けた。

そこには掌サイズの子猫と同じ色同じ顔の半年くらい大きい猫がちょこんと座っていた。

「可愛いね、兄弟かな」
ちびと付き合う(謎)になってからなぜか野良猫が私を警戒しないような気がするのだった。
「とにかく、中に入って」
私は2匹を家に上げた。
「おなかが空いてるのかな?」
「実はちびの紹介んなんですが、この子を預かっていただきたいのです。」
いきなりこの猫も人の言葉で言った。
「捨て猫にしては綺麗だしどうしたの?」
「わけはちびがあさってに迎えに来たときお話します。どうかよろしくです」
大きいほうの猫は猫すわりをして頭を下げた。
「あなたはいいの?」
「僕は用(謎)がありますので、この子をお願いします。ごはん食べれます、おしっこのしつけもしてあります。寂しがりなのでよろしくです」
何度も振り返りながら大きいほうの猫は闇の中に。
「名前を聞くの忘れた、どうしよう・・・」
クッションの上で眠ってた子猫が目を覚ました。
知ってるものがいないためかミューミュー泣き出した。
「おいで、お膝の上に、抱っこしてあげるから・・・」
なおもミューミュー言いながら子猫は私に抱かれた。

しばらくして子猫は口を開いた。
「すみません、驚かれたことでしょう、私はTHE CATとちびの子供です。つれてきてくれたのは兄、THE CATとは猫の長の称号、今の長は私の母、通称ちゃっちゅと言う名前です。あなたに名づけられた。」
「子猫ちゃんのお名前は?」
「THE CATになる猫は名前をつけないんです。だから、名前はありません」
「じゃあちゃっちゅに名前をつけたのは悪かったのね?」
「いいんですよ、母も気に入ってたし^^」
「あなたの名前を2日間だけの名前つけていいかな?」
「もちろん、こちらに預けるのは母と父の希望でしたし。」
「何があったの?」
「くわしいことは私も知りません、ただ、THE CATに呼び出しがかかったことだけはいえます。だから次期THE CATの私を隠したんです」
「危ないことをしてるの?」
「それが契約ですから、国家機密組織と我々の。」
子猫は子猫でないこえで話した、若き王者の貫禄で。
「THE CATが死ぬなら次期THE CATはそのために生きていないといけないと」
「悲しい定めなのね、今日だけは私に甘えなさい、お母さんじゃないけど」
「母も父も、貴女にはおせわを受けたんだと言ってました。たとえ一日でもいいからあなたの元においてもらえと」
小さいのにこのこは運命を受け入れてる、このむとこのまざるにかかわらず自分に課せられる運命。
普通の子猫ならまだ母猫にくっついてるところ、母のぬくもりと愛撫にわが身をまかせ、一番幸せな時間を過ごしてるはずの時期にこの子はもう運命のふちにたってるのだ。 
無心に私の手の中でごろごろ言ってた猫がきっとした顔をして言った。
「ここにも刺客がくるかもしれません、私は自分を守るすべを伝授されました、だから心配要りませんから」
「どんなものが来るの・」
「同属の裏切り者、その他動物、人間、魑魅魍魎なんかも・・・」
「一緒に頑張りましょう、ちゃっちゅとちびの子なら。私も頑張る」
「でも、今日は一緒に寝てくださいね、ままがいないから・・・」
白い毛糸球のような猫は私にしがみついて眠った。



2007年03月05日(月)
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