ひとりがたり
風里



 

(2)
「今日はありがとう、またな」
ちびは私を広い近くの公園をぐるっと一周させて私を家まで送って帰って行った。
久しぶりだこんなに歩いたのは、日差しが新鮮だった、芝生の上に寝転がるのも何年ぶりだろう。
とにかくしゃべる猫との出会いは、失恋のことなんか心のどこにしまったか忘れるほどの出来事だった。
「馬鹿だと思われるから俺のことはしゃべるんじゃないぜ」
とか何とか言って帰って行った大きい身体だが名前はちびと言う猫。

熱を測ってみた、これは現実?
実際、私は杖もマントもホグワーツ魔法魔術学校からシーリングワックスで封蠟された入学案内の来たハリーポッターではないが猫語がわかる。
猫が私の言葉がわかるといったほうがいいのか、どっちにしても未知との遭遇であった、だから日記に書いておこう。

春の少し長くなった日が西にかた向く頃になっても、あの興奮は冷めやらず、食事を作る気にも食べる気にもならなかった。
昨日から、あの失恋騒動から何にも食べていなかった。
買ってあったお刺身はちびにあげたし。
とにかく珈琲でも入れよう、母は入院中で私しか家にいなく食事を作らなくても文句を言う者もいない。

珈琲を片手にPCを立ち上げる、Vistaは私に挑戦するかのように早く立ち上がる。
いつものチャットいつものHPを覗く、ラブラブの日記が書かれていた。
いいもんね、私も一応男の友猫(謎)ちびができたから(笑)

そのときメールが来た、例の男からだった。
彼女があまり強引に交際を迫ったので・・・と言ういいわけが書かれていた。
今でも私を好きらしい、私はもうなんとも思ってなかったが。
返信する気にもなれずメールを削除、受信拒否リストに入れた。
リアル知り合いではなかったのでもういいんではないかと。

夜になるとPCを切ってTVを見ていた。
窓の外で猫の鳴き声が・・・
私は窓から覗いてみると、ちびがいた。
「おなか空いたの?今から散歩はいやだよ、怖いやん夜の公園」
「集会に行かないか?」
「集会?」
「猫の集会だ。招待しようと思って」
「私は人間だけど・・・」
「長老がいいと言うから」
「今からなの?」
「いや夜中の25時に迎えに来るから」
「うん、連れてって」
「じゃあまた、あとで」
私は今夜25時に猫の集会に行く予定が入った(苦笑)
で、何を着て行けばいいんだろうか?私はカジュアルなものしか持っていない。

とにかくご飯を食べた、猫の集会で食べ物を出されたら困るから(苦笑)

いつもチャットが佳境に入る午前1時、私はコートを羽織ってちびを待っていた。

「いくぞ」
にゃーんではなかった(笑)
私は外に出て鍵をかけた。
ちびは後ろを何度か振り向きながら走っていく。
月明かりだけの真夜中、後で思うとなぜ怖くなかったのか、今でもそれはわからない。
多くの猫が守ってくれてたのか、知らない道を全速力で走った。
障害物はなにもなかった。

何分走ったかわからない、ちびがいきなり止まった。
そこはどこなんだろう、昼間ならわかるかもしれないが今はわからない所だった。
「着いたよ」
そこには猫の集団があった、でも怖くはなかった、見知った猫がたくさんいたから。

「長老が呼んでおられる」
ちびでも敬語を使う相手がいるんだ、そう思いながら言われるままに集団から少しはなれたところに行った。
「はじめまして・・・ではないよね。。。」
私は長老と呼ばれてる猫の顔を見てそういった・
「ちゃっちゅやね?、会いたかった・・・どこに行ったかと思った」
私は猫には長老と言われてる、私がちゃっちゅと名づけた猫を抱いてしまった。
「確かに、ちゃっちゅだが・・・ここでは長老なので・・・はなれてくれないか」
「ごめんね、懐かしくて・・・」

私はちゃっちゅを地面に下ろした。
「よく来てくれてありがとう、今はちびを可愛がってくれてるんやね」
「私が遊んでもらってるような」
「猫の集会にようこそ、この集会は満月の夜行われる、情報交換をしたり、簡単に言えばまあ仲良くやりましょうという宴会のような・・・」
「長老メールです」
「わかった、またあとで。悪いね席をはずす」
ちゃっちゅはどこからに走っていった。

「メールですって?」
「そうだ、珍しくもない」
ちびは続けた。
「テレパシーを使えなくなった猫には与えられる、猫ホーダイだからお金はかからない(笑)」
「で、どうかしたの?ち、長老があわててる」
ちゃっちゅは肉球でキーを押し続けている、それもかなり長い時間。

「今日はおもてなしもできなくなりましたから、お帰りになっていただきたいと長老がおっしゃってます」
ちゃっちゅを一回り小さくしたような猫が伝えに来た。

「わかった、送っていくとお伝えしてくれ」
「はい、お伝えします」

気がつくと猫の集団はいつの間にかなくなっていた。

「何が起こったの?」
「今は話せない、送るから」
「わかった」

行く道を走ったように私とちびは飛ぶように走って家についた。

「お休み、またな」
ちびはそれだけ言うと走り去った。

何があったの?
私がそれを問う前にちびは私の視界から消えていた、まるで闇解けたように。

私はベッドに横になった、いつもなら薬を飲んでもかなりの時間眠れないのにその夜はすぐに眠ってしまった。













2007年03月04日(日)
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