ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■2443, 死刑直前の手紙
【GOOD MORNING】q・ω・´)
『哲学の教科書』・中島義道ー の中で見つけた、
処刑前夜から処刑二時間前までに断続的に母親に送った死刑囚の手紙である。
人生の不条理が、そのまま出ている。今回は私の感想などは、何も書けない!
何度も何度も読まなければ、その心の底には辿りはつけない。
ガン末期の別れの似たような場面に何度か立ち会ってきた。
違いは、刑死かどうかの差である。
罪悪感を持って虚空へ立ち向かう心情は如何なるものか?。
ーーー
一九六九年三月八日
ーおかあさん
あたたかい晩ですね。
きょうはひょっとしたら東京に泊まるとか言っていたけれど、とにかく、
あまり悲しまずにからだに悪いことは気をつけて、よくやすむようにしてください。
ほんとに思いがけないことになってしまい、(むろん、そして一方ではじゅうぶんソノタ
の用意はしてきてはいたけれど)おかあさんに最後の、そして最大の親不孝をしてしまい、
ほんとうにすみません。
おかあさんは、よくしてくださいましたね。ありがとう。
M先生のおっしゃるように、ぼくはおかあさんによって〈神の愛〉を知った、と思います。
まだまだ努力が足りなくて、それに書きたいことや、考えて深めたいことも多くあって、
そのうえなによりおかあさんはじめ皆さんと別れるのはつらいけれど、しかしこの与えられた
〈時〉は絶対的な意味をもっており、ただ、耐えつつ受け入れる以外にはありません。
でも、ソレは、ぼくひとりのことで、おかあさんに与えつつある悲しみの責めを
まぬがれることは、むろんできません。 ゆるしてくださいね。
おわびのしるしに、天国へ行ったら、きっとおかあさんのために山ほど祈り、
守ってあげますね。 だから、おかあさん、もう泣くのはやめなさい……
−−
ー今は八時過ぎ。
夕がた、おかあさんのハガキが、美絵君と「あけぼの」のシスターの御文とともに到着しました。
もうおかあさんのハガキを見られないのか。 会えないんだな……ということのすべて、
きょう突然あったことと、あすのことすべてが、ユメのようです。
ユメならさめればいいのに……と思うのだけれどもやはりユメではない。
だからこの一瞬一瞬をだいじにしましょう。
ほんとうに長いようで短い一生でした。 四十歳と七か月とすこし。 おかあさんの半分です。
いろんなことがありましたねえ。 ほんとにいろんなことがあった。
そして今、おかあさんにとって すべてのことが喜びに満たされていたというのに、
ぼくのためにいっさいが灰色になってしまいましたね。
ごめんなさい。
きょうは、久しぶりにおかあさんの肩をたたき、髪をくしけずり、手をさすることができました。
すっかり白髪になって、シワだらけになって、小さくなって、 やっぱり幼いころに知った
あのおかあさんと同じでした。
でもおかあさんはやはり幼い頃に知ったあのお母さんと同じでした。・・・・・・
ーー
ー夜中、といっても十一時過ぎ。十二時近くかな。
なんだか寝つかれないので、としおいつ、こしかたをふり返ってみたり、あすに備えて
手ぬかりがないかと考えてみたり、おかあさんがきょう「わたしが代わってやりたい」
と言ってくださったことばを思ったり、ほっぺたのあたたかみを思い出したりしています。
別に、あすの死を恐れてではなく、昼間の疲れのせいでしょう。・・・・・・・・
ーー
ー夜明け。
まだ外はまっくらですが、おかあさんにもっとたくさん書いてあげたくて、起きました。
よく寝たような、うつらうつらのなかに過ぎてしまったような、へんな気分です。
おかあさんは? たぶん、ぼくのためにたくさん祈ってくださったことでしょう。ありがとう。
もうすぐ、きょうの午前中にはいなくなってしまう。そう思って、今ごろまた泣いているの〜
ほんとうにごめんなさい。 おかあさんの写真は笑っているのに。
きょうも、さして寒くない。髪とツメのこと、よく頼んでみます。きっとだいじょうぶですよ。
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12月12日(水)
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