ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■7043,チョッとした小噺 〜むしろ、この世界も悪くない!
酒を飲んでホンワカした気分と同じである。
私の場合、秘境旅行や、酒席などで至高体験を数知れないほど経験してきたので、
アルコールや、寝る前の音楽で、直にトリップしやすい蓄積があり、
体質的に脳内には回路が出来ている。まあ、それはいい!
以下は、この本の冒頭に出てくる心理学者ジュラール・ボルの
「麻薬への旅」の中の一節である。麻薬のトリップの状態を書いた本を何冊か
持っているが、どれも似ている。面白く解りやすいので紹介しておこう。
ーー1967年10月から著者ボルの2年間の経験談であるーー
ーーー p・12~13
ネパールではハシーシを政府が許可しているし、1`の値段が150フラン
前後(ヨーロッパでは五十倍の値段)なので、ヒッピーの顔ぶれは変るが、
いつも400人ぐらいいるそうだ。力トマソズには彼らの連絡場所になっている
「リトル・チペタソ」というチベヅト人経営の小さなキャバレーがあるが、
ある日のことリーというアメリカのヒッピーがLSDを持ってやってきた。
そうしてカトマソズの谷間の平地に仲間たちと「ヒヅピーラソド」と名付けた
小コミュニティのテソト生活をはじめるのだが、夜の十時ごろ、
みんなしてカプセル入りのLSDを少量の水で飲んだときの経験を、
著者ポルは書きはじめる。暗い夜で、キャンプの焚火が赤い。
遠くにヒマラヤ山脈の輪郭が見える。
みんな声を出さないでLSDが効きはじめるのをジーッと待っている。
夜の静寂さ。二十分したとき、耳のうしろの首筋が急に熱くなったかと思うと、
舌ざわりが金属的になった。まだ効果はあらわれないし、意識は平常どおりだ。
すると始まったなと思う感覚の変化。神経が局部的にピリッと硬直し、
その瞬間はロではいえない異常な現象がおそいかかった気持である。
いろいろなLSD体験記から想像していたのと同じ状態であって、自己が解体し、
まわりの知覚世界に溶けこんでいく。それがすこしたつと、こうなった。
焚火を見ていると、その火のなかに、ぼくがいる。ぼくは火なんだな、
いや火の向うに存在しているようだ。というのは火や明りや影が、
ぼくの思考や意志に服従するように動いているからで、まわりの世界を、
ぼくが上からブタをしているような気持になってきたからである。それなのに、
ぼくとは違ったものなのだ。まわりのすべてと同じものになっていく。
と同時に余計だと思う漠然としたものが、仮面をかぶったように引っこんで
しまった。そうして宇宙的になりはじめた精神的内部の知覚作用。
いろいろなものが重なり合って見える。
その重なりかたの度合が強烈な作用をもっていて、たがいに矛盾するかと思うと
無限の連想へとみちびいていく。そのときレコードをかけた者がいて、
チベットの宗教音楽が流れてきた。
すると意識がより複雑になり、その音楽は、ぼくが作曲したものではないか、
なぜならばくの体内から生まれてきたようだし、ぼくの思考と厳格に一致して
いるからだ。単調だが美しく流れていく音楽は、ぼくなのである。
一つの音が、つぎの音になるまでにハッキリと分離して耳に入ってくる。
ぼくと周囲との溶解状態が、さっきよりずっと完全なものとなった。
ハシーシやメスカリンが効きだしたときのように、しぜんと目ぶたがふさがる。
すると音楽が目に見えてきた。一つの音が明りで書いたようになり、キラギラと
雑色になって飛び散る。無限に大きい万華鏡のまん中にいるようだし、ある音が、
ほかの音よりも強くぼくのなかで反響し、それが後頭部や胃のあたりをシピれさせ、
打楽器の音が強烈な電気ショックのように全身を飛びあげるようにするのだった。
ぼくは手を見る。それは歪んだり、大きさや色の具合が変化したりする。そばに
いる仲間の顔を見ると、小さなダイヤモソドがちりばめられていてピカピカと輝き、
とても美しい。ぼくは目を閉じる。するとまた心の奥ふかくへと落ち込んでいく。
自己と別世界との溶解。非現実の現実的な知覚状態。
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06月26日(金)
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