ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■7021,閑話小題 〜如何しようもない
 一方、元仏レジスタンス闘士のステファン・エセルが2010年に発表した
冊子「怒れ! 憤れ!」は世界35ヶ国で計450万冊を売るベストセラーに。
その中で、無関心でいると「人間が人間足らしめている大切なものを失う。
その一つが、怒りであり、怒りの対象に自ら挑む意志である」と… ≫
 ―
▼ 老いは、正常な人間を異常の人間に変えていく。老いること自体が「病気」
 のためである。それを本人も周囲も全く気付かいため悲劇が起こる。
『自由、平等、博愛』という欧州が生み出した建前。これに対して、無知の
大衆は怒っている。世界のごく一部の人たちが、その富の半分を占有している
現実が世界に知られれば、それは怒って当然。古代から、神々が怒っていた
のだから、現代の人たちが怒らないでいられない。最近、シネマ館でみる
ハリウッドもの。先週末に見た『ゴジラ』も大画面の中で、怪獣同士の闘いの
中で街中を破壊尽くす。その背景音に、日本の囃子まで入っている。観客に
破壊を共有させて、怒りの蓄積を破壊と共に飛ばしてしまう。老いの最大の
敵は、老化から出てくる怒りの感情。 何とも嫌な無念な姿である。
 それらが群れると「溝だめ」になる。 

―ー――
2012/06/04
老いの見本帳ーダークサイト −8
       「老いへの不安 歳を取りそこねる人たち 」春日武彦(著)
  * 老いと鬱屈
 私の嫌いな言葉に「世間」がある。日本の社会は、「世間」という言葉と
視線に常に怯えて暮らしている。属している社会が固定化されているほど、
そこには難儀なものを抱えたグロテスクな世界ができている。それで一生
何も出来ないで死を間近にしたときに、その正体に初めて気づくのである。 
その不快な毒を体内に蓄積して、ただれている世間という虫。シラミである。
老化は、否が応でも毒が蓄積されている。そう、世間の一員に陥っていく。
だから、熟年になったら群れてはならない。 
 ー次の箇所は、老いの屈託を巧妙に表現している。
≪老いることは、人生経験を積むことによって「ちょっとやそっとで動じない」
人間になっていくこととは違うのだろうか。難儀なこと、つまり鬱陶しかったり
面倒だったり厄介だったり気を滅入らせたり鼻白む気分にさせたりするような
ことへの免疫を獲得していく過程ではないのか。 難儀なことを解決するのか、
避けるのか、無視するのか、笑い飛ばすのか、それは人によって違うだろうが、
とにかく次第にうろたえなくなり頼もしくなっていくことこそが、老いの
喜ばしい側面ではないかとわたしは思っていたのだった。 
 だが、世の中にはまことに嫌な法則がある。嬉しいことや楽しいことに我々
の感覚はすぐに麻痺してしまうのに、不快なことや苦しいことにはちっとも
馴れが生じない、という法則である。不快なことや苦しい事象は、砒素や重金属
のように体内へ蓄積して害を及ぼすことはあっても耐性はできないものらしい。 
だから老人は欝屈していく。歳を取るほど裏口や楽屋が見えてしまい、なおさら
難儀なものを背負い込んでいく。世間はどんどんグロテスクになっていき、
鈍感な者のみが我が世を謳歌できるシステムとなりつつある。・・・老いても
鬱屈や煩悩は蓄積していくばかり、難儀なことには事欠かない。遅かれ早かれ、
この世界のほうを、さながら迷子みたいに置き去りにしてやれるのである・・≫
▼「嫌な法則がある。嬉しいことや楽しいことに我々の感覚はすぐに麻痺する
 のに、不快なことや苦しいことにはちっとも馴れが生じない、という法則。」
は、正に人間の不幸の起因である。それを打ち消す方法は数多あるが、その毒は
体内に蓄積し、さらに体外に放出する。そして、マイナスの循環で、体内の毒は、
ますます濃くなっていく。この本は、その見本帳でもあるため面白いのである。
これまで見てきた身近な老人に、酷似しているため妙に馴染むのである。
本格的に一歩ずつ仲間入をしていく。それならば老いは鬱屈するものと初め
から割り切って孤立していた方が良い?

――――


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06月04日(木)
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