ID:54909
堀井On-Line
by horii86
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■3164,「物語」と「小説」
アビゲイル・ヴァン・ビューレン
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2007年12月03日(月)
2434, 絞首刑 −1
〔命の書〕「ビルマの日々」の中の一遍
『絞首刑』(G.オーウェル著)より
(*´з`*)<ォハョウサω♪
死刑執行をリアルに書いてある本である。 そして執行する側の神経の麻痺、残酷さが恐ろしい。
行間から執行する側の微妙な心理が生々しい。何らかのカタチで「事実は永遠に残る」というのは肯かされる。
こういう瞬間こそ、「いま、ここ」の永遠性というのか。 オーウェルの、こういう切口は鋭く哲学的である。
どんな哲学者の「死についての考察」より余程、考えさせられる。 次々回は中島義道著「哲学の教科書」
の中の死刑直前の手紙を書き写してみる。 死の直前は、生の凝縮された時間になる。
ーまずは、その部分を抜粋ー
ーー
われわれは五ヤードはなれて待機していた。衛兵たちは円を作るようにして絞首台のまわりに立っている。
やがて縄を首に巻かれた囚人は、自分の神に向かって大声で叫びはじめた。 「ラーム、ラーム、ラーム、ラーム!」
甲高くくりかえされるその声には、祈りとか助けを求める叫びのような切迫したおびえはなく、むしろ葬式の鐘の音
のように落ちついてリズミカルだった。この声を聞くと犬はクーンと鼻を鳴らした。
まだ絞首台の上に立っていた首吊り役が粉袋のような綿の小さな袋を取り出すと、囚人の顔に上からグイとかぶせた。
だがあの声は布袋をかぶされても、まだくりかえしくりかえししつこくつづいていた。「ラーム、ラーム、
ラーム、ラーム!」 首吊り役が下に降りて来てレパーを握り、待機した。何分もたったような気がした。
「ラーム、ラーム、ラーム!」という囚人のこもったような声は、一瞬もやむことなくしつこくつづいている。
所長はうつむいたまま、杖の先でゆっくり地面を突ついていた。囚人がきまった回数だけ数えるまで、
待ってやるつもりかも知れないー五十回か、百回か。全員が顔色を変えていた。インド人たちはひどいコーヒーのような
灰色の顔をしているし、銃剣にも一、二本震えているのがあった。われわれは絞首台の上の、縛りつけられ袋をかぶせられた
男を見ながら、じっとその叫びを聞いていた。一声でまた一秒、命が延びるのだ。誰もが同じことを考えていたー
えい、早く殺しちまえ、すませろ、あの忌まわしい声を止めるんだ! とうぜん、所長は意を決した。
彼はぐいと顔を上げて杖を一振りした。「チャーロー!」その叫びには獰猛な響きさえあった。
ガタンと音がして、しんとなった。囚人の姿は消え、ローブが勝手に捩れ続けていた。わたしが手を放すと、犬はまっすぐ
絞首台の裏側へ駆けて行ったが、それきりそこに立ち止まって吠え、こんどは庭の隙までさがって雑草の中にひそんだまま、
おそるおそる首をのばしてわれわれの方を眺めた。われわれは囚人の死体を確認するために絞首台のうしろにまわった。
彼は爪先をまっすぐ下に向けて石のように息絶えたまま、ひどくゆっくりと回転していた。・・・・・
犬はさっきの行為を恥じるようにこそこそと行列のあとを追った。われわれは絞首台のある庭を離れると、
刑の執行を待っている死刑囚の独房の前をとおり、刑務所の中央にある広い庭へ出た。受刑者たちは、鉄のたががはまって
竹の簾を手にした衛兵たちに監視されながら、すでに朝食にありついていた。一人一人がブリキの小皿を手にして
うずくまぞいる列の前を、パケツを持った二人の衛兵が米をすくってやりながらまわって行く。絞首刑のあとでは、
これはじつに家庭的な楽しい光景だった。仕事を終えたわれわれは、すっかりほっとしていた。
歌いたいような、駆け出したいような気分で、思わず笑いがこみあげてきた。
「 ーーーー 」 つづく
(*бωб*)/
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2006年12月03日(日)
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