ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■前の記事のつづきです。
 金融界では、連銀のグリーンスパン前議長が先日、アラブ産油国(GCC)にドルペッグ破棄を勧めた。連銀のバーナンキ現議長は「アメリカの不況はひどくなる」と景気に冷水を浴びせる発言を何度も繰り返している。いずれも、金融とドルの覇権の大舞台を支える大黒柱を斧で切り倒そうとする、多極化誘発の言動である。かつてイギリス好みの戦争機関の一部だった米連銀は、今では隠れ多極主義の資本家の手先に成り変わっている。
http://www.reuters.com/articlePrint?articleId=USL2515874520080225

▼イギリスをEUに幽閉する

 アメリカが金融崩壊していくと、同じ金融システムに乗っているイギリスも連鎖的に崩壊する。以前の記事( http://tanakanews.com/080115UK.htm )に書いたように、イギリスは今年、金融財政の危機になると予測されている。ス
コットランドでは、イギリスから分離独立を目指す動きも続いており、独立支持の元俳優ショーン・コネリーは最近、77歳の自分が死ぬ前にスコットランドは独立すると発言している。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/7261161.stm

 米英同盟の崩壊、金融財政危機と国土縮小の末、イギリスはアメリカを操作して世界を間接支配することができなくなり、EUに本格加盟せざるを得なくなるだろうが、EUでは今、リスボン条約などによって、政治統合が着々と進んでいる。独仏はすでに軍事外交の統合で合意しており、イギリスもEUに本格加盟するなら、軍事外交の権限をEU本部に明け渡さねばならない。

 これは、イギリスが外交力を駆使してアメリカを牛耳ることを永久に不可能にする。アメリカの資本家から見れば、いまいましいイギリスをEUに永久に幽閉することができる。

 イギリスは、EUを牛耳って覇権の謀略を続けようとするかもしれないが、かつて二度もイギリスに引っかけられて潰された上、50年の東西分割の刑に処されたドイツは、もう騙されないだろう。サルコジのフランスも、親英的なふりをしつつ実際には多極化の方に乗る狡猾な戦略を展開している。独仏とも、イギリスの長年の謀略から解放されたいはずである。

 アメリカは、イギリスとイスラエルから解放されて国際不干渉主義に戻っていくだろうし、ロシアや中国や中東(GCC+イラン+トルコ)も、米英覇権から抜け、独自の地域覇権の勢力になっていくだろうから、たとえイギリスがEUを牛耳れたとしても大したことはできず、世界は多極化していくだろう。アメリカを好戦的にしていたイギリスとイスラエルが無力化されることで、世界は今より安定した状態になることが期待できる。

-----------------------------------(以上引用)

田中の言う「隠れ多極主義」「多極主義の臭い」というのも、まあみんながみんな本気でそんな目論見を持っているわけではなく、ただ単に目先の仕事をちゃんとやろうとしたらそうなった、ということの方が多いだろう。

とはいえ、「覇権主義」「多極主義」という軸で現代史を切り分けてみる試みは、わたしにとって世界を把握するのにとても便利な概念ではある。

ただし。
忘れてはならないのは、「あれかこれか」の「二元論」に陥ってはいけない、ということ。
世界はアメーバのように、構成する分子(個々人だったりそれぞれの国家だったり)はめいめい勝手な方向に動いていて、たまたまその中で動きが多い方(その場でトクな方?)に全体がちょこっと移動する、というタイプのものだと思う。

はっきり言って、わたしたち個人が思うほど、「社会」とか「世界」って、頭良くはないのではないか。

03月01日(土)
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