ID:51752
原案帳#20(since 1973-)
by 会津里花
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■またまた「田中宇的モーソー」……現代史を解く鍵?
「田中宇(たなかさかい)の国際ニュース解説」より。

-----------------------------------(以下引用)
http://tanakanews.com/080228capital.htm

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★資本の論理と帝国の論理
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 私が自分なりに国際政治を何年か分析してきて思うことは「近代の国際政治の根幹にあるものは、資本の論理と、帝国の論理(もしくは国家の理論)との対立・矛盾・暗闘ではないか」ということだ。キャピタリズムとナショナリズムの相克といってもよい。

 帝国・国家の論理、ナショナリズムの側では、最重要のことは、自分の国が発展することである。他の国々との関係は自国を発展させるために利用・搾取するものであり、自国に脅威となる他国は何とかして潰そうする。(国家の中には大国に搾取される一方の小国も多い。「国家の論理」より「帝国の論理」と呼ぶ方がふさわしい)

 半面、資本の論理、キャピタリズムの側では、最重要のことは儲け・利潤の最大化である。国内の投資先より外国の投資先の方が儲かるなら、資本を外国に移転して儲けようとする。帝国の論理に基づくなら、脅威として潰すべき他国でも、資本の論理に基づくと、自国より利回り(成長率)が高い好ましい外国投資先だという、論理の対峙・相克が往々にして起きる。

 帝国の論理に基づき国家を政治的に動かす支配層と、資本の論理に基づき経済的に動かす大資本家とは、往々にして重なりあう勢力である。帝国と資本の対立というより、支配層内の内部葛藤というべきかもしれない。ただ欧米の場合、大資本家にはユダヤ人が多く、彼らは超国家的なネットワークで動いている。その意味では資本と帝国の相克は、ユダヤとナショナリズムとの相克と見ることもできる。

 しかしその一方で、16世紀のスペイン、17世紀のオランダ、18世紀のイギリスと、世界規模の帝国を築いた国々の中枢では、いつもユダヤ人が国際ネットワークの技能を提供しており、それが諸帝国の成功の秘訣の一つだった。欧州のロスチャイルド(ユダヤ)と、アメリカのロックフェラー(非ユダヤ)の対立として描く人もいるが、ロックフェラーは古くから親中国・親ロシアで、多極主義を好む資本家という点でロスチャイルドと同じ側に立っており、両者は根本的な対立をしていない。

▼産業革命を世界に広げた資本家

 資本の論理が大々的に登場したのは、18世紀末にイギリスで始まった産業革命以降である。イギリスでは、産業革命で儲けた人々が産業資本家として台頭したが、しばらくすると彼らは、産業革命が一段落して経済成長が鈍化し始めたイギリスより、まだ産業革命が始まっていないドイツなど外国に投資した方が儲けが大きいことに気づいた。

 投資の利回りが良いのは、産業革命(工業化)が軌道に乗ってから20年間ぐらいで、イギリスでは1780−1800年だった。その後イギリスの成長が鈍化し、資本家が海外へと新規投資先を開拓していった結果、1850−1870年にはドイツで、1880−1900年には日本で、それぞれ産業革命が展開した。

 イギリスの資本家が他の国々の産業革命に投資した時、出したものはお金だけではない。イギリスの製造業の技術や、企業経営の技能に加え、封建体制を脱して工業生産に適した社会に転換する過程としての近代化を始めたばかりの日本やドイツなど政府に対し、法律や軍事など近代的国家運営のノウハウまで移植したはずである。その方が新興国家は安定し、資本家の儲けが大きくなる。

 ロスチャイルドのような大手の資本家は、イギリスの国家運営に関与し、自分たちの番頭を首相や政治家、高級官僚として送り込んでいたから、イギリスの国家運営の技能を入手するのは簡単だった。ロスチャイルドのようなユダヤ人資本家は、イギリスだけでなくドイツやフランスにも古くからの拠点を持っていた(そもそもロスチャイルドは産業革命前にドイツからイギリスへと拡大した)。だから、資本や産業技術は簡単にイギリスから独仏などに広がり、資本家の儲けを拡大した。


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02月29日(金)
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