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江草 乗の言いたい放題
by 江草 乗
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■犬は凶暴な生き物です
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 オレは子どもの頃犬が苦手だった。近所にどう猛な犬を飼っている家があって、その家では夜になると犬を散歩させるのではなくて放していたのである。飼い主にとってはかわいいペットであっても、無関係の他人にとっては猛獣だ。まだオレが小学校低学年の頃だった。そろばん塾の帰りに家の近くてその犬に遭遇したオレは、あわてて逃げた。そして回り道をして別の方向から帰ることにした。するとまたその方向にその犬が出現した。何度かそうした空しい努力を繰り返したあげく、オレはその犬を避けるために、よその家の庭に侵入して、塀を乗り越えて家に帰った。一時間ほど余計に掛かったのだ。オレの帰りが遅くなったのを心配していた家人は、泣きながらブロック塀を乗り越えて帰ってきたオレの姿にびっくりして、その犬を放した家に怒鳴り込んだ。母親がものすごい剣幕で怒っていたことを覚えている。

 その事件以後、犬はずっと家に鎖でつながれた状態となった。しかし、小学校の帰りに家の前を通るとその犬はオレに向かって激しくほえた。「このクソガキ、おまえのせいでオレは自由を失ったんだ!」と犬はオレに怒りをぶつけていたのかも知れない。自分に向かって激しくほえるクソ犬に対して、オレは石をぶつけて復讐したりしていた。鎖でつながれている以上逆襲されることはない。あんなひどい目に自分は遭ったのだ。ここで石をぶつけるくらいの復讐は許されていい・・・そう考えていたのである。

 大型犬が小さな子どもを遅うという痛ましい事件が発生して、オレが即座に思い出したのは幼少期のその記憶だった。読売新聞のWEBサイトから引用しよう。
 
土佐犬、小3と郵便局員襲う…「鍵かけ忘れた」飼い主逮捕
 27日午後4時55分頃、大阪府松原市立部の路上で、近くの小学3年の男児(9)と、配達中の郵便局員の男性(23)が、土佐犬に相次いで襲われた。
 男児は顔や首など5か所以上をかまれ、あごを骨折するなど重傷を負い、男性も右ひじをかまれ軽傷。府警松原署の調べに、近くに住む飼い主の会社員瀬良明豊容疑者(23)が「オリの鍵をかけ忘れた」と供述、同署は28日未明、重過失傷害容疑で逮捕した。
 発表によると、土佐犬は雄の3歳で、体長1・5メートル。瀬良容疑者は闘犬大会に出場させるため自宅で6頭を飼育していた。1頭ずつオリに入れていたが、この犬のオリの鍵だけをかけ忘れて外出した。
 付近の住民らの話では、男児は友達4、5人で遊んでいて襲われた。近所の男性が犬を棒でたたいて男児を助け出し、シャッターを下ろした自宅車庫の中に子どもたちを避難させたという。2、3週間前にもオリから逃げ出した土佐犬が付近をうろついていたという。
(2008年10月28日01時01分 読売新聞)

 新聞記事には書かれてないが、現場は襲われた子どもの血があたりに飛び散って実に凄惨な状況だったという。大人が棒で叩いて制止しても、犬は執拗に子どもを襲い続けたのだという。のどに噛みついたという行動はまさに闘犬のものであり、この凶暴な土佐犬はまるで闘犬の時のように子どもを噛み殺そうとして襲ってきたのである。まさに殺人未遂である。

 犬が六頭飼われてたこの家の周辺はいつも悪臭が立ちこめ、近隣住民はとても迷惑していた。過去にも犬小屋の檻のカギが開いていて、この凶暴な土佐犬が近所をうろついていたことがあったという。無責任な管理状態は以前から続いていたのだ。起こるべくして今回の事件が起きたのである。重過失傷害で飼い主の男が逮捕されたのも当然のことである。


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10月29日(水)
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