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雲間の朝日に想うこと
by 小坊主
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■其れでも欲しい唇でしたか
其処に滞って居た香りが、
幾ら仄かでも。

其の香りは、
対敵行動を暴発させ得る、
劇薬だから。


瞬時に、
鮮明に、
過去が蘇る。



唇の感触と。

バナナの様な、
嫌な匂い。



今擦れ違った男は。

其の敵とは、
別人な筈なのに。










酔いに委せて、
迷走する其の対象を。

やっとの想いで探し当て、
捕獲した瞬間に。


 「男なんかみんな同じだよ!」


街中の、
人の視線も省みず、
突然大声で泣き出して。



それでも。

皆同じ男に分類される筈の俺に、
必死に抱き付いて、
必死に背伸びをして。


あの時姫は、
俺の唇をせがんだ。









吸い込まれる様に、
口付けた時。

俺は姫への想いより、
軽々しく見ず知らずと会った姫への怒りと、
敵に対する本能で動いて居た。


ついさっき、
別の男に陵辱された此の唇を。

俺の唇で上書きする目的で、
姫に口付けた。






 「俺が消してやる。」
 「だからもう泣くな・・・」



其の言葉は誤りで。

何の想いも存在しない、
陵辱の延長に違いなかったから。










今尚、
劇薬に触れると。

姫にも俺自身にも、
嫌気が指す。











擦れ違い様に。

僅かに嗅覚を刺激した、
此の、
バナナの様な香りは。



きっと、
姫の唇を奪った男の匂いだ。
04月07日(水)
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