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武ニュースDiary
by あさかぜ
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■映画エッセイA(金城武という文字について・2)
以前、近所のビデオショップで物色していたとき、
「天使の涙」と「恋する惑星」を見つけた。借りて帰り、1回見た。
この2本は、前にも見たことがある。

「天使の涙」を初めて見たのは、ぼくらのバンドの初代ベーシストの家だった。
ソファーに人が固まって、盛んにおしゃべりをしていた。
彼は、私にあの名場面≠見逃すなと、しきりに注意した
――それはあるクローズアップのシーンで、
ミシェル・リーが白い足に網タイツをはいてる。
窓の外からは、リズミカルな電車の音が聞こえてくる。
ミシェルの足は静かに、狂おしさを押し殺してくねり、
クライマックスのけいれんへと突き進む。
ぼくがこの名場面≠しっかり見届けると、彼は満足そうな顔をした。

その内、部屋は次第にがやがやとやかましくなり、タバコの煙が立ち込めてきた。
人と人のすきまから、武演ずる口のきけない若者が
めちゃくちゃに逃げ回るのがちらちらと見えた。
それからチャーリー・ヤンとの狂気じみた彷徨へと移っていった。

これが最初の「天使の涙」体験だった。
その後、場所は違うが同じような状況で「恋する惑星」を見た。
武の警官が言った一言だけを覚えている。
「所詮、愛はパイナップルの缶詰と同じだ。期限がある」

そのころ、ウォン・カーウァイは今ほど人気が出ておらず、
「天使の涙」や「恋する惑星」のような映画は、
一握りの人とは違う§A中だけが見る映画だった。
ちょうどぼくと、われらがベーシストのような。
映画の話をしているとき、「天使の涙」と「恋する惑星」を見たと言うと、
相手の目の色が変わるのを、ひそかに得意がっていたものだ。

この2つの映画の武のように、ぼくらのベーシストもナンバーを持っていた。
もちろん、囚人番号ではなく、警察の取調べ番号でもない。
彼のナンバーは00。ぼくのナンバーが55であるのと同じ。
98年、99年当時は、中国ではちょうどヘビーメタルが人気を博し、
ジャンク・ミュージックがパンクとともに台頭してきた時期だったと記憶している。
そのころ、ぼくはバンドを始めたばかりで、
クールなイギリス風ポストパンクをやっていた。
00が当時傾倒していたのはガン&ローゼズだった。

00は、ぼくには「恋する惑星」のような小市民的色彩の作品が
気に入るはずだと思っていたのだろう。
「天使の涙」のようなパンク感覚の映画ではなく。
もしかしたら、彼にはぼくが小市民的なものへの憧れに
よだれをたらさんばかりであるとさえ映っていたのかもしれない。 (続く)


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BBS   11:28


11月23日(日)
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