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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■12ステップで求められる正直さとは
 「無くて七癖」という言葉があるように、人間は誰でもたくさんのクセを持っているものです。文章を書くことにも、その人のクセがあらわれます。僕の文章にもきっと多くのクセがあることでしょう。そして、ビッグブックを書いたビル・Wの文章にもクセがあります。

 その一つは、同じ言葉を繰り返して使わず、別の言葉で言い換えることです。例えば12のステップのステップ5には「過ち」という言葉があり、ステップ6には「欠点」、ステップ7には「短所」という言葉があります。これはすべて同じことを指して使われています。以前、某所で欠点と短所の違いについての議論が盛り上がったことがありましたが、今から思えば虚しい議論だったことが分かります。

 さて、回復するには「正直さ」が必要なのだと言います。ビッグブックにも「正直さ」が必要だと書かれています。だから「ミーティングで自分のことを正直に話しなさい」とアドバイスするスポンサーもいるでしょう。「あいつは正直でない」という非難めいた言葉も聞きます。

 ですが、ここで言われている正直さは、他者に対する正直さです。ビッグブックで正直という言葉が出てくるときは、たいていが「自分自身に対する正直さ」を指しています。

 この「自分に正直」という言葉は、日本語として判じ物のように意味不明です。「自分に正直になったら、飲みたい私は酒を飲んじゃいますよ」という笑えないジョークを言われても、どう反応したら良いか困ってしまいます。

 ビルはもちろん「自分に正直」という言葉も他の言葉に言い換えています。「自分の問題に正直に直面することができれば・・回復できる」としています。たしかに、12ステップは一つひとつが自分の何らかの問題に直面するように求めています。

 「自分に正直」とはどう言う意味かと尋ねられ、ビルのこの文章をしめすと、たいてい「ああ、なるほど」と納得してもらえます。ですが、自分が問題を抱えていると認めるのは、難しいことであるし、嫌なことでもあります。

 『米国アディクション列伝』を書いたホワイトは、その著書の中で「AAプログラムは、人間がいかに不完全な存在か教えてくれる」と述べています。アルコホーリクばかりでなく、あらゆる人間は不完全な存在なのです。神の完全さに比べれば、人間の優劣なんてドングリの背比べ、五十歩百歩にすぎません。(そのことを理解するために、神という完全なる存在の概念が必要なのかもしれません)。そのように考えれば、自分の問題(不完全さ)を認めることは、より容易になるのではないかと思います。

05月17日(水)
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