ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■仲間没する
「神に定められた役割を果たすために、自分たちはこの世に生きているのだ」(p.99)
We are in the world to play the role He assigns.
すでに一ヶ月すぎてしまいましたが、7月21日の土曜日に、バーブさんが亡くなったという知らせを受けました。お会いするたびに衰えが目立っていたので、ついにこの日が来てしまった、という淋しい気持ちを味わいました。
最後にお目にかかったのは、施設の40周年記念行事の夕食で、他の仲間と一緒にお弁当を食べながら話をした時でした。「もうこれで思い残すことはない」とおっしゃったので、そう言わずに50周年までと言ったのですが、それから3週間後に訃報を受け取ることになりました。
有名な、という形容詞は、無名の人間の集まりにはふさわしくないのでしょう。その代わりに「よく知られた(well known)」という言葉を使うようですが、彼こそまさに「よく知られた」人物でした。横浜でのAA日本40周年紀年行事でも、夜のスピーカーをされてました。施設でもAAでも、回復のアイコンというべき存在でした。
だが彼自身がそうした象徴になろうと望んでなったのかと問えば、答えは明確にノーでしょう。彼自身の言動からそれは明らかですし、そもそも象徴とはなりたくてなれるものじゃありませんから。
バーブというニックネームの由来を聞いたことがあります。日本のAAの始まりの頃はメンバー数が少なく、英語グループの人たちが来てくれて一緒にミーティングをしていたのだそうです。(通訳はミニー神父やピーター神父がしていた)。英語圏の人たちは、お互いをファーストネームで呼びますが、それをかっこいいと思った初期の日本人AAメンバーたちは、自分に外国人ぽいファーストネームを付け、それを名乗るようにしたんだそうです。それが、日本のAAメンバーが奇妙なニックネームを使う始まりだったのだとか。
彼は自分にBobというファーストネームを付け、それを英語読みするとバーブと聞こえたので、そう名乗りました。「だから俺は本当はボブなんだよ」と、そんな初期のエピソードを聞かせてくれる人ももうこの世にいないわけです。
僕は彼とは縁遠く、なかなか近づきになれませんでしたが、晩年の数年は定期的に話をする機会を得ました。等身大の彼は、当然のことながらただの一人のアルコホーリクにすぎません。だが、同時に彼は偉大な人物でもあります。では、何が彼を偉大たらしめたのか。
彼は、バーブ、あるいは本名から取って「ヤマシン」と呼ばれました。誰かが「ヤマシンという役柄は彼にしかできない」と言っていました。まさにその通り。先ほども述べたように、回復の象徴という役割は、自ら望んでなれるものでなく、(自分の意志とは関係なく)神によって選ばれるものです。彼は40年以上かけて、バーブ(あるいはヤマシン)という役割を覚悟を持って果たしきりました。だからこそ、40周年行事で「盆と正月がいっぺんに来たみてえだな」と満ち足りた顔をされていたのでしょう。
もうちょっと僕らのところにも来てくださいよ、とお願いしたら、「お前のところは敷居が高くてな、苦手なんだよ」と真顔で言われました。でもまあ、彼がずっと応援し続けてくれなければ、ビッグブックの12ステップはここまで広がりはしなかったはずです。僕にとってもたいへんな恩人であるし、昨年AAのラウンドアップでビッグブックを使ったビギナーズミーティングをやったとき、来てくださったのは、たいへん良い思い出です。
「どんどん新しいことをやっていかなくちゃならないんだ!」という言葉は心に刻んでいます。
彼みたいになれると思わないし、なりたいとも思いません。僕は、僕に課された役割を果たしていけば良いのだと思っています。
葬儀は家族葬で済んでいるそうですが、施設主催でお別れの会が下記のように行われます。参列者による献花と、数名のお話が予定されていると聞いています。
日時: 平成30年8月25日(土)13:30〜15:30(開場13:20)
場所: 滝野川西ふれあい館(東京都北区滝野川6−21−5) 6階 第1ホール
交通: JR埼京線「板橋駅」西口下車徒歩10分
都営三田線「西巣鴨駅」下車徒歩5分
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08月24日(金)
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