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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■AAはAA、断酒会は断酒会
AAは「言いっぱなし、聞きっぱなし」というやり方でミーティングをやっています。AAに馴染みのない人には聞き慣れない言葉かも知れません。AAでやっているのは「ミーティング」といっても会議ではなく、他の人の発言に意見したり、批判したり、質問を挟んだりしません。人の話は黙って聞き、自分の順番が来たら話をする。このやり方を日本では「言いっぱなし、聞きっぱなし」と名付けています。

海外のAAでも、おおむねこのやり方だそうです。僕の数少ない経験からもそうですし、海外でAAに出席した人たちに聞いても同じです。

「言いっぱなし、聞きっぱなし」を英語で何というのだ? と聞かれることもありますが、それに相当する言葉はないみたいですね。ポピュラーだからこそ名前が必要ないってことなのでしょう。ビル・ホワイトの『米国アディクション列伝』では、これを「crosstalkを排除した」やり方と呼んでいます。

あらかじめ話し手が決まっており、他の参加者はそれを聞くために参加するというミーティングを speaker meeting (スピーカー・ミーティング)と呼びます。そうではなく、参加者の中から適当に話し手が選ばれるのを discussion meeting と呼びます。ディスカッションと言っても議論(debate)ではなく、その中身は「言いっぱなし、聞きっぱなし」です。

いずれにせよ、AAのミーティングは対話を排したやり方が主流です。なぜそうなのか理由は分かりません。意外に思われるかも知れませんが、AAは特に「言いっぱなし、聞きっぱなし」のやり方をするとは決めていません。別のやり方をしても良いのだし、実際別のやり方をしているところもあります。

僕はアメリカに行ったときに、講師役のAAメンバーがホワイトボードに図を描きながら他のメンバーにステップを「教えて」いるミーティングに出ました。その会場はたくさんの参加者で溢れかえっていました。また、ビッグブックを少しずつ読み進めながら、1行1行の意味を読み解いていく形式もあるそうです。メンバーお手製のテキストを使っているところもあります。参加者が「その場で」ステップに取り組むワークショップもあります。共通しているのは、経験の深いメンバーに新しい人が導かれていくという形式になっていることです。「議論(ディベート)」を行うやり方をしているところは聞いたことがありません。

最近、断酒会の関係の人と話す機会がありました。(具体的に名前を挙げて良いのか分からないので伏せておきます)。近年断酒会はその人数を減らしています。なぜ減っているのかその理由はいろいろあるのでしょうが、(AAの影響を受けて)「言いっぱなし、聞きっぱなし」を望む声が増え、そのように運営される断酒例会が増えたことも一因だろうという話を聞きました。

本来、断酒例会は「言いっぱなし、聞きっぱなし」ではないわけです。会員が順番に話をするという点ではAAの discussion meeting と同じですが、話をした後に、進行役である会長さんから、話の内容を褒められたり、逆に一くさり小言を頂戴したりします。あまり莫迦なことを言えば、他の「先輩」や家族からも批判を受けます。このようにして褒められたり、批判をされたりしながら、断酒会的な考え方と行動を身につけていくのが断酒会のやり方なのだそうです。

断酒例会を「言いっぱなし、聞きっぱなし」にしてしまうと、考え方や行動を修正する機会が失われ、回復が難しくなってしまう。それが会員の減らす原因(少なくともその一つ)になっているのだと。

では、AAはなぜ「言いっぱなし、聞きっぱなし」なのか。それは、AAにはミーティングの他にスポンサーシップという一対一の関係があるからです。メンバーシップ・サーヴェイという調査によれば、「スポンサーシップが弱体化した」という日本でもAAメンバーの半数はスポンサーを持っており、アメリカでは実に8割のメンバーがスポンサーを持っています。


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10月11日(金)
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