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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■12ステップの利点・欠点
「12ステップに欠点はないのか?」という質問を受けることがあります。自分のやっている手法の欠点を知ることはとても大切だと思います。
欠点の話をする前に、12ステップの優れた点にちょっと触れておきます。
12ステップの良いところは、手順が明確であることです。12ステップの手順は、AAのビッグブックという本に「正確に、詳しく、はっきりと」説明されています。だから、ビッグブックという手順書に従って行えば良いわけです。
ビッグブックは料理のレシピ本に例えられます。レシピに書かれたとおりの材料を集めて、手順通りに調理すれば、本に載っているのとだいたい同じ料理ができあがります。違った手順を踏めば、違ったものができあがります。例えば、沸騰したお湯で5分間煮ると書いてあるところを、その代わりに300℃に熱したサラダ油で15分間揚げたら違った料理ができあがります(たぶんそれは食べられないシロモノでしょう)。
12ステップをやっても良い結果が出ない場合には、たいていこれと同じ間違いを犯しています。ビッグブックという手順書を読みながらも、そこから外れたやり方をして、違った結果をもたらしてしまっているのです。
手順が明確に確立されている点が12ステップの良いところです。
ただ、このビッグブックという本が少々分かりづらい本なのです。今は世界的に出版不況と言われ、本を読む人が減っています。しかし、この本が書かれた1930年代には多くの人が本を読んでいました。ラジオ放送が始まってまだ10年あまり、テレビ放送はまだ始まっていない時代です。人々は娯楽のため、教養のため、情報を得るために良く本を読みました。ビッグブックでも引用されているウィリアム・ジェイムスの『宗教的体験の諸相』は、この時代のベストセラーなのだそうです。こんな小難しい本がベストセラーになるなんて! ですが、ビッグブックはそういう時代の本なのです。
洗練された文章を書くためには修辞が欠かせません。「修辞って何?」といういう人は
wikipedia.jp:修辞技法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%AE%E8%BE%9E
三省堂:修辞法
http://www.sanseido.net/main/words/hyakka/rheto/03.aspx
あたりを読んでください。ビル・Wは大学で修辞学を学んだだけあって、彼の文章は修辞に満ちています。たとえば、p.38にある、
「足もとに並べられた簡単な霊的な道具一式を手に取るよりほかなかった」
という文章は、12ステップに取り組むほかなかったと言いたいだけなのですが、転義法(比喩)という手法が使われています。
修辞された文章を読み慣れた人ならともかく、そもそも本を読み慣れていない人がビッグブックを読むと「???」ということになってしまいます。比喩を読み解くのが苦手な人たちもいて、「12ステップを足下に並べるってどういう意味ですか?」なんて質問が出てきたりします。(まあ、そういう質問が出てくること時代は真面目に取り組んでいるからこそだと言えますが)。場合によっては1行、1行解題していく必要すらあります。現代文に訳さないと枕草子が読めないみたいなものでしょうか。
一般に、子供向けの絵本やジュブナイル小説では修辞を少なくし、大人向けの小説やエッセイでは修辞を多くして凝った文章になります。村上春樹が人気があるのも、彼の修辞がある種の人たちの心の琴線をかき鳴らすからでしょう?
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10月15日(火)
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