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たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■日本アルコール関連問題学会岐阜大会の印象(その1)
日本アルコール関連問題学会の岐阜大会に出席してきました。2日間の会場にいたのに、分科会やシンポジウムにまったく参加しませんでした。学会と呼ばれる場所には何度も行っていますが、こんなことは初めてです。唯一出たのが、昼食を確保するために聞いた認知症のランチョンセミナーだけでした。「いったいお前は何をしに行ってるんだ?」と言われそうですが、自分が学ぶためではなくAAの広報活動で行ったわけです。
前回に続いて今回もポスター発表を行いました。これは2001年から2010年の4回のメンバーシップ・サーヴェイの結果を比較したものです。これによって、この9年間で女性メンバーの比率が増加を続けていること(20%→27%)。女性の増加は全国7地域すべてで起きていること。また、収入の手段とソブラエティの長さの関係を見ることで、酒を飲まない期間が長くなるにつれて生活保護の比率が減っていく(つまり経済的自立を成し遂げていく)様子が分かりました。興味をお持ちの方はJSOにお問い合わせいただければ資料が得られると思います。この他、資料の配付やAA書籍の販売など、JSOスタッフや地元のAAメンバーが活躍されていました。
分科会やシンポジウムを聞かなくても、会場の中で人と接しているだけで分かってくることはいくつかあります。今回の大会では大きなトピックが3つありました。ひとつは、アル法ネットが取り組んでいる「アルコール健康障害対策基本法」の制定について。もう一つは、レグテクト(アカンプロサートカルシウム)の登場です。
アカンプロサートについては、服用するだけで飲酒欲求を抑える効果があるということで、発売前には「抗酒剤(ノックビンやシアナマイド)が過去のものになる」とか、「AAや断酒会が不要になる」などと言う人もいましたが、実際発売されてみると現場へのインパクトはあまりない様子です。その理由のひとつは、久里浜での治験で有意な差が出たとしているものの、それは従来の手法に追加して使った結果だからです。エフェクトサイズもそれほど大きくはないので、抗酒剤と併用するのが良いという医師もいました。このクスリがAAや断酒会の存在意義を否定するわけではなさそうです。
3つのトピックの最後は「飲酒量低減という治療目標」です。むしろこちらのほうが、AAや断酒会に与えるインパクトは大きいでしょう。実は一緒に参加した妻の気分が悪くなってしまい、救護室で横になって休む脇に付き添っていました。救護室はメインホールの楽屋が使われており、小さなテレビでメインホールの様子が中継されていました。スライドの内容は分かりませんが、音声だけ聞こえていました。
飲酒量低減というのは、ひらたく言うと「節酒」です。日本のアルコール依存症治療では、治療の目標は言うまでもなく「完全断酒」です。AAも断酒会も断酒を目標として掲げています。個人的経験からしても、アルコホーリクが節酒することは無理です。
しかし、世界的にも、歴史的にも、アルコール依存症の治療目標は断酒とは限らず、節酒も節酒の選択肢のひとつになっています。日本でもここ2〜3年ぐらい、節酒を選択肢のひとつにしたらどうか、という定言がされるようになってきました(その発信源は久里浜だという気がしますが)。
WHOの疫学調査で、20カ国でアルコール依存・乱用で治療が必要な人と実際に治療を受けている人の比率(treatment gap)を見たところ、78%が未治療だったそうです。これは調査対象となった8種類の疾患の中で一番悪い数字です。
The treatment gap in mental health care
http://www.who.int/bulletin/volumes/82/11/en/858.pdf
つまりアルコール依存(乱用)の人のうち8割近くが治療を受けていないということです。日本でも厚生労働省の研究班の調査で、アルコール依存症者(IDC-10の診断基準を満たす人)は80万人と見積もられていますが、一方の患者調査によれば実際に治療を受けている人は5万人に過ぎません。
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07月23日(火)
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