ID:19200
たったひとつの冴えないやりかた
by アル中のひいらぎ
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■もちろん「底つき」は必要ですとも(その1)
今回は、重箱の隅を突くような話です。

ステップ1では、

・身体のアレルギー(渇望現象)
・精神の強迫観念(再飲酒をもたらすもの)

この二つを抱えていることを認めることが大切です。

ビッグブックでは強迫観念という言葉はあまり出てこず、代わりに「狂気」という言葉が目立ちます。例えば「ビルの物語」に、「知らぬ間にあの最初の一杯への狂気が襲ってきて、一九三四年の休戦記念日にまた飲み始めた」(p.12)というふうに使われています。

では、このアレルギー(渇望現象)と強迫観念が『12のステップと12の伝統』(12&12)で、どう扱われているか。ちょっと調べてみましょう。

12&12の目次(p.5)には、各ステップの概要が書かれていますが、そのステップ1のところには

強迫観念と身体のアレルギー(Mental obsession plus physical allergy)

精神の強迫観念と身体のアレルギーとハッキリ書かれています。

ステップ1についての文章はp.29から始まっていますが、そのページに「強迫観念と身体のアレルギー」のことが書かれています。

スポンサーになってくれた人たちは、私たちが人間の意志の力ではどうしても打ち破ることができない、言いようのないほど強力な精神的とらわれ(meltal obsession)の犠牲者になっていたのだと断言した。

精神的とらわれと訳されていますが精神の強迫観念のことです。

自分の意志の力だけで、この強迫観念(compulsion)と戦って勝つ方法はなかったとも言った。

ビル・Wの文章は、同じ言葉を繰り返さない、同じ事を表現するのに違う言葉を使う、という修辞法が多用されますが、ここでも obsession を compulsion と呼び変えています。(それが同じ強迫観念に翻訳されているのはちょっと皮肉だ)。

私たちのとまどいにもかかわらず、その人たちは、アルコールに対する私たちの感覚がますます過敏になっていることを指摘し、それは一種のアレルギーだとも言った。

「私たちのとまどいにもかかわらず」の部分の原文は Relentlessly deepening our dilemma ですから、「私たちをますます深刻なジレンマに陥れたのは」という意味です。ジレンマとは二つのことの板挟みになることですが、その一つは前述の強迫観念(再飲酒をもたらすもの)、そしてもうひとつはここで「アレルギー」だと言っています。

そのアレルギーとは our increasing sensitivity to alcohol ・・・アルコールに対して私たちがますます過敏に反応するようになってきたことです。渇望現象のことですね。

続きを読み進めましょう。

アルコールという暴君が私たちの上に双刃(もろは)の剣(つるぎ)を振るった。

強迫観念と渇望現象の二つを「両刃の剣」という詩的な表現で表しています。(あぁ〜、ビルの修辞法ってめんどくさいね)。

まず私たちは、狂ったような衝動、飲み続けるようにと宣告されたような衝動にかられた。次いで、自分自身を破壊することになる身体のアレルギーに打ちのめされた。

渇望現象が、もっと飲み続けたいという狂ったような衝動である(だから酒量がコントロールできない)ことが分かります。この渇望現象がアレルギーそのものです。(飲んだせいで肝臓とか痛めるという話じゃなくて)。

この戦いで孤軍奮闘して勝利を得た者はほとんどいない。アルコホーリクが自分の力で回復できたことはほとんどない。これが統計上の事実である。

この渇望現象と強迫観念のタッグチーム相手に、自分の意志の力で戦って勝利し、回復できた人はほとんどいない(つまりあなたはアルコールに対して無力だ)ということを伝えています。

こうしてみると、12&12でも渇望現象と強迫観念というステップ1の情報について、ほんとうに簡単にではあるけれど、一応言及されていることがわかります。とは言うものの、こんなわずか数行の文章で内容を理解するのは無理なことです。ステップをやるための重要な情報を伝える役割はビッグブックに譲り、12&12はビッグブックを理解した人向けに補足情報として書かれたことが分かります。


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06月13日(木)
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